誘拐騒動 その5

ククリ

ウソだった……!?

ええ……

わたしが考えたんです。

ジェニー!

いいの。……うちは両親がとても厳しくて、交際なんて許してくれないんです。

家柄がどうとか、ユーキとのこと認めてくれないから……

この屋敷が何か儀式をやってるというのは噂になってたから……そこで、さらわれて、助けてもらったら一目置かれるじゃない……?

ククリ

可愛い顔してとんでもないこと考えるわね。

リチャード

やれやれ、とんでもないものと遭遇してしまった。

アルマド

結局、悪魔の儀式なんてなかったんですね。

リチャード

ただの噂だな。暇な町人が考えたんだろうよ。

リチャード

ククリたちにも伝えてやらんとな。

廊下を歩く二人。その時――

リチャード
アルマド

下へ降りる階段に。馴染みのある赤色。それは……血痕!

スネイク

つまりどういうことだぜ!

ククリ

よーするに、狂言ってことよ。

ククリ

お嬢ちゃんが誘拐される。ウソよ? もちろん。そしてこの子が、さっそうと助けるってわけ。

ククリ

そしたら、ヒーローじゃん。どんな厳しい親でも二人の仲を認めちゃうんじゃなーい?

スネイク

そんなもん、うまくいくわけねーだろ……

ククリ

なんで案外冷静なんだよ、そこで! いいけど!

ククリ

どっちにしろ、浅はかだわ。ほんとうに怪しい儀式に巻き込まれたらどうするつもりだったの。

儀式か……
僕は、ここでお仕えしてるからわかりますけど、そんな大したものじゃないんですけどね。噂に尾ひれがついただけで。

さっきは騒いで、ごめんなさい。お母様が依頼した方々なんですよね? ユーキ以外に助けてもらったら意味がなくなっちゃう、って思って……

わたしたちのこと……どうするつもりですか? 連れ戻しますか……?

ククリ

あほらし、あほらし。いいわ。二人で愛の狂言劇の続きするなり、好きにして。

ククリ

お母様には適当に言っとくわよ。最終的にあんたたちが帰ってくるならどんな方法でもいいでしょ、別に。

ククリ

帰るわよ、スネイク。

スネイク

わーったよ。

ありがとうございます……! ご迷惑おかけしました。

礼をいい、奥の方へ下がっていく二人。

――そこに!

リチャード

おい! 気をつけろ! 彼らを二人っきりにさせるな!

スネイク

リチャード? お前も潜入してたのか。なんだよ?

アルマド

はぁ、はぁ、儀式は、儀式は……!

駆けつけるリチャード。彼我の距離、十人分。ああ、ああなんということだ。絶望的に間に合わない。

娘たちふたりのそばに階段から……あやしき手!

ひ!

ついで顔を現す、あやしき男! 目を爛々と輝かせ、娘を羽交い締めにする!

ひひひ、生きのいい少女だ……生贄にふさわしい!

階下へと引きずり込まれる娘!

ジェニー!!

ククリ

なによ、あいつ!

リチャード

屋敷の主人だ。奥方のふざけた催しの裏で、密かに儀式を行っていたらしい!

スネイク

儀式はほんとにあったのかよ!

あ……あ……お願い、ジェニーを助けて……

階段をめがけ駆け出す四人。交差する少年。ただ一度振り返り、

リチャード

当然だ!!

それが、依頼なのだから。

ひーひひひ! わしは、神を召喚するぞ!

スネイク

ま じ か

続く

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