終わらせなくてはならない。何度も繰り返した悪夢を、何度も繰り返し見た光景を、自分を変えた運命を、永遠とも思える地獄から向け出すチャンスをようやく手に入れた。
 仲間と呼べない仲間を作り、アイツを殺す段階をいくつ試したことだろう。何度も失敗に終わった。何度も仲間が死ぬところを見た。だからこそ成功すると信じよう。

 決着を付けるのだ。リセット&スタートをしないように。

 平日の昼下がり、カフェ止まり木に協力者に呼ばれた四人の大人がテーブルに座っていた。協力者は集まった大人達に礼をして話し出した。

協力者

こんにちは、こんな時間にわざわざ集まってくれて、ありがとう

鬼灯先生

そんなことを聞くために、私は学校を休んだわけじゃないぞ

六十部武蔵

私も病院を急に休みを入れるのが大変だったんですよ


 鬼灯と六十部が文句を言う。協力者は真面目に話す。

協力者

その件については申し訳ない

協力者

今日、皆さんに集まってもらったのは現在、集団睡眠の被害者の救出についてです


 協力者の口調は今までのはじけた感じではなく堅かった。鬼灯は違和感がありつつ質問をする。

鬼灯先生

それは、私の曙学園の生徒と野沢心の事だな


 鬼灯の質問に協力者は頷いた。

鬼灯先生

……おい。いつも通りに話せないのか

協力者

ああ、すまない。少し緊張してな

協力者

――さて


 協力者は一息おいて話し出した。

協力者

単刀直入に言おう。名も無き者を倒せば全て丸く収まる

吉良助教

その、名も無き者とは何です?


 吉良は小さく手を上げて質問をした。

協力者

名も無き者は、この集団睡眠の原因さ

六十部武蔵

その、名も無き者が子供達を眠らせていると?

協力者

その通りだよ。六十部先生


 六十部の問いに協力者はすんなりと答えた。

鬼灯先生

集団睡眠の犯人の名前としては変なニックネームだな

ミミタン

本名じゃないですよね


 鬼灯と美見の発言に協力者は訂正を入れる。

協力者

ちがうんだな、ミミタン

協力者

そうだね。ここで話すことは君達が知っている常識は捨ててくれ、通用しない


 六十部は食い入るように協力者に質問をした。

六十部武蔵

一つ質問ですが、集団睡眠の犯人は人間ですか、それとも人間以外の物ですか?

吉良助教

どうしたんですか、六十部先輩

協力者

良い質問だ。六十部先生

協力者

その答えは、人間以外だよ。六十部先生

協力者

私達はそれを化け物と言うがね

六十部武蔵

なるほど


 周りが動揺している中、六十部は何か心当たりがあるようにスマートフォンを取り出して、全員に見えるようにテーブルに置いた。それを囲みながら全員で覗くと画面には本が映っている。

六十部武蔵

これは昨日、吉良くんから送られた写真の一部です

吉良助教

それで何と書かれているんですか?

六十部武蔵

実は送られた本のタイトルが魔法、呪い、怪異、超能力といった吉良くんの専門分野としたオカルトがメインな物でした


 六十部はスマートフォンを操作して、次々と送られた写真を見せる。その中にはドイツ語以外にも多数の言語があるのが分かった。これら全部が魔法、呪い、怪異、超能力、もといオカルト関係の本としたら背筋がゾッとした。

吉良助教

魔法、呪い、怪異ですか

吉良助教

じゃあ、あの本棚にはお宝、オカルト関係の本だらけって事ですよね

吉良助教

でも、名も無き者が化け物と関係は無いですよね

六十部武蔵

そうですか、あなたも鮫野木くんから野沢心の父親が送ってきた手紙の話を聞きましたよね


 吉良は情報の整理を始める。

吉良助教

はい、確か内容は四つ

吉良助教

一つ目は助けてと殴り書きをした物

吉良助教

二つ目はドイツ語で書かれた呪文の模写

吉良助教

三つ目は魔法陣

吉良助教

四つ目はこの世界は偽りに包まれていると書かれた物

吉良助教

この四つがどうかしましたか?


 首をかしげる吉良に対し六十部は説明を入れる。

六十部武蔵

良いですか、地下書庫の本、手紙の内容は野沢心の父親からするに手紙を送る以前に野沢心の父親は地下書庫を利用しています

六十部武蔵

恐らく、研究のため

吉良助教

研究、もしかして手紙の呪文と魔法陣ですか


 六十部は頷いた。

六十部武蔵

名も無き者は手紙にあった呪文と魔法陣で呼び出した悪魔、悪魔を呼び出すための地下書庫

六十部武蔵

それであっていますか? 協力者


 協力者は拍手をして、喜びながら答える。

協力者

流石、六十部先生。大正解だ。まるで探偵みたいだったよ

六十部武蔵

私は探偵ではありません。医者ですよ

協力者

そうさ、あなたは医者さ

吉良助教

待って下さい。大正解って事は名も無き者は幽霊か妖怪の霊的な物ですか

協力者

そうなるよ。君が好きなね


 驚く吉良に協力者は普通に答えた。
信じがたい真実を聞かされて確信を持つ者、驚きで好奇心を隠せない者、信じられない者、物事について行けない者、それぞれの考えに別れていた。

エピソード43.5 集団睡眠救出作戦(1)

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