第三試練が始まる前に一時の休息を得た参加者達。
第三試練が始まる前に一時の休息を得た参加者達。
広間に集まる参加者達には、
豪華な食事が振舞われることになった。
そんな中、
敬介は第二試練のことで美咲に話しかけていた。
実は、第二試練クリアできたのは、天野さんのおかげなんだ。
え?私?
敬介はポケットの中から、
少しクシャっとなった付箋を取り出し、
美咲に見せた。
この付箋……。
その付箋にどこか見覚えがあった。
天野さんから借りたノートに貼ってあった付箋だよ。
暗い闇の中で、なぜか不安が大きくなってさ。
このまま光術士になるのを諦めたら楽になれるって思ったんだ。
今考えればどうかしてたよ。
それで、この付箋からノートの最後のページに書いてあったメッセージを思い出して、ここで諦めちゃいけないって立ち直れた。
その付箋を眺めながら、
敬介は第二試練のことを思い返す。
そんなことがあったんだ。
あのメッセージは、形山君にちゃんと伝えたいことだったの。
だって、みんなの笑顔の為に一緒に頑張る大切な仲間だから。
美咲もまた、
第二試練の最中に父と母との出来事から、
皆を守ると誓ったことを思い出す。
うん。
絶対に第三試練も突破して、正式な光術士として認められるように頑張ろう。
だね。
お互いに決意を確かめ合って、
再び食事に手を付けた。
そして、
奥の廊下から第二試練を終えた三人の人物が、
広間へと入ってくる。
おっ!
ついに、名家のエリート達のお出ましか。
大宮 剛
(おおみや ごう)
倉間 八雲
(くらま やくも)
葉栗 陽平
(はぐり ようへい)
くっ。
…………。
ん?
名家のやつら……。
第三試練でやつらに手を出しちゃったら、かなりマズイからね。
仁、分かった?
そんなもん、俺でも分かってる。
名家に手を出すと、後々厄介だからな。
仁は蓮に背中を向けた。
いつもなら、
雪が真っ先に仁へと忠告をするのだが、
三人の中の一人を凝視していたので、
代わりに蓮が仁へと声をかけた。
はぁ…………。
その後、蓮は雪へも声をかける。
相変わらず好きなんだね。
大宮剛のこと。
蓮はがボソっと呟いた。
ち、違うわよ!
偶然そっちの方向を見てただけ。
顔を真っ赤にして慌てる雪の声を聞き、
近くにいた修太や仁はキョトンとしている。
そうなの?
小学生の時にラブレター書い……。
わっ!!
あれは、内緒にしてって言ったでしょ。
雪は大きな声で言葉を遮り、
とっさに蓮の口を手で覆うと小声で注意した。
蓮は急に口を抑えられたので、
モゴモゴ言ってるように聞こえるが、
しっかり謝っている。
名家出身の三人の登場に、
広間全体にはざわついた雰囲気が漂う。
しかし、
三幻僧との戦いが終わってから、
一度も大宮に会っていなかったので、
敬介と美咲は笑みを浮かべた。
大宮も二人に気付き、
テーブルの方へ歩み寄ってくる。
…………。
よぉ、元気そうだな。
大宮君、久しぶりだね。
ああ。
やっぱり、お前らも認証試練に招待されてたのか。
周りの参加者達から大宮の表情が、
少しムスッとしているように見えているが、
多少付き合いのある者なら、
これが通常時の大宮ということはよく分かる。
噂には聞いてたけど、あの三人知り合いなんだな。
らしいな。
大宮家の奴は実力あるだろうが、あっちの二人も一緒にシャドーと戦ったとは思えないし……。
たまたまその場にいただけだよ。
久々の再会をした三人を見て、
参加者達はヒソヒソと話をしている。
一方で、
皿に盛られたスパゲッティを頬張る修太が、
小刻みに手を震わせる雪に声をかけた。
雪先輩、どうしたんすか?
食い過ぎたんすか?
うるさいっ!!
怖っ!!
あっちに行ってよ。
雪の態度を見て、
逃げ出すように別のテーブルへ行った。
修太の横で、
取り皿に食事も盛っていた仁は、
その光景を見て素早く蓮の隣に戻った。
なぁ。
なんで雪は機嫌悪いんだ?
さ、さぁ。
食べたい物がなかったんじゃないのかな?
そうなのか。
女って分からんな。
下手に話したら、
自分にもとばっちりが来ると思った蓮は、
とっさに誤魔化す。
……あの刑事のおっさんがね。
うん。
頑張って調査してくれてるみたい。
あの女……。
大宮君と楽しそうに話してる。