誘拐騒動 その3
いいわ。そろそろ行くわよ。
コクリ
狙い定め、撃ち放つ、一本の矢。
結び付けられたロープ。
塀を飛び越え、屋敷の庭に潜入する。っと、そこに……!
ヤバい、番犬だ。スネイク、黙らせて!
うおおおお! 先・手・必・勝!
ぎええええ!
ちょっと! 相手は訓練された番犬よ! 油断しないで。
いってて。くぅーー悪く思うなよ。少し眠ってな。おりゃ!
やっかいな番犬をやり過ごし、奥の方へ。
ひそひそ。ほら、あの2階の角部屋。見張ってたけど、昼間っからカーテンが閉まってたわ。
怪しいってか? でもよ、単に使われてない物置なんじゃねーの?
かもね。でも、今は明かりついてる。厚そうなカーテンでわかりにくいけど……間違いないわ。
さすが鷹の目ククリだぜ……!
最近のククリっちゃあ、乱闘のイメージしかねえから意外で、かっこいいぜ。
ありがと。ただ、今の失言であんたの寿命3年縮まったけどね。
――――
さて……目指す部屋は二階か。流石に手が届かないわね。どうする……?
ククリ、手ぇ貸してくれ。俺なら行ける。
! オーケイ。
めいいっぱいの助走。壁際で待つ彼女の手を踏み台に――更に、飛び上がる!
よし、取り付いた!
ちっ 鍵、かかってやがる……
最小限に窓ガラスを割り、中に手を入れ鍵を開け、侵入。その手際、鮮やか。
素早くロープを降ろし、室内を確認して――
!!
やべ! 見つかった!?
なになに? 早く奥入ってよ、風が吹いて寒いのよ……
……
あっ……!
長い赤い髪の毛、色素の薄い瞳……聞いてた見た目と一緒じゃない。この子だわ、ターゲットは。
なんでぇびっくりした。俺はてっきり屋敷の奴らに見つかったかと。
ねえ、あなた。誘拐されて囚われてるのよね? このままじゃ生贄にされちゃう。一緒に逃げましょう。
ほら、誰かに見つからないうちに、こっそり……
だ……だ
――――大きく息を吸い、
誰かーーー! 来てーー!
えーーーーーーー?
なんでーーー!?
なんだなんだ! どうした!
侵入者かあ~? 儀式の邪魔されちゃたまんね。
ばかもの、儀式の主賓が増えたとなぜ思わんか。生贄が更に3人! うたげ!
なるほど! ひゃっほ~い!
じょーだんじゃないわ! 逃げるわよ!
先程侵入した窓際。振り返れば、いつの間にか移動した娘。
……
ばっ……通れないぜ!?
儀式! 儀式!
うおおおおお突・破・するわよ!
結局殴り合いかよーー!?
続く