稲荷

小鹿さん女の子の調子はどう?

まぁしばらく安静にしてれば大丈夫。

稲荷

よかったぁ、ところで殿は。

1人で部屋にこもってるみたいよ。

経丸は1通の手紙を読んでいた。その手紙に天羽長経を預かっておる、そちらにお返ししたいためこの場所に1人で来ていただきたいと書かれていた。経丸は手紙を読んですぐさま用意をしてその場所に向かった。
片倉は薪を割っていたら経丸が1人で走っていく姿を目撃した。

霜河

奴はこんな森に呼んでも1人で来るのか伊原。

伊原

もちろん来るでしょう、奴はまだ子供浅はかでございます。何も疑うこともせずにくるでしょう。

霜河

そうだとよいが。仮に一人できてめちゃくちゃ強かったらどうする?

伊原

心配しなくても平気ですよ殿。もうそろそろ時間となりましょう、準備の方はよろしいですか?

霜河

おう。

伊原

「松田殿、斉藤殿、山口殿、林殿も準備の方よろしくお願いします」

四天王達

我ら霜河四天王が揃っているから安心できますぞ殿。

霜河

頼もしいなお主たち

四天王達

ありがたきお言葉。

経丸は手紙にかいてある森の中についた。
そして大声で

経丸

天羽経丸、ただいま到着しました。

1人の男が出てきた。

霜河

ご苦労様です。

霜河

天羽経丸殿、お話があります。先日経丸様が連れて行かれたひのを返して欲しいのです。

経丸

ひの?

霜河

おなごの事ですよ。

経丸

あーあの子ひのって言うんですか。

霜河

そのひのを返してほしい。

経丸

そうですか。でも今城の中におりますよ。ひのは、それより我が父上はどこにおられるのですか?

この経丸の言葉で男の目つきが変わった。

霜河

父上そんなもの最初からいませぬが。

男は手を上げた。
その瞬間木の影から一斉に男達が出てきた。
経丸は一瞬にして囲まれた。
経丸は状況が把握出来なかった。

経丸

何事だ。

霜河

お主のせいでな謀反人のひのを殺せなかったんだよ。お主はひのを殺すのを邪魔しただけではなく我の部下をよくもあんな目に遭わせてくれたな。

経丸

ひのが謀反人?

経丸はビックリした声で聞いた。

霜河

何も知らずにでしゃばりやがって、だからお主を殺す。そしてその後ひのを捕らえる。

男は凄んだ顔で言った。そしてまわりの男たちに向かって

霜河

借りを返す時が来た、お主ら天羽経丸を捕らえよ。

一斉に男達が経丸に襲い掛かって来た。経丸は全く状況を理解出来なかったがとりあえず逃げようと思ったが相手の数の多さに逃走は不可能と悟とり死を覚悟した。

経丸

どうせ死ぬなら1人でも多く倒そう我の人生ここまでだ。

経丸が敵に突っ込んでいこうとしたその時だった。

霜河

おまえら、攻撃をやめー。

この霜河の叫び声に経丸は後ろを振り返った。

片倉

殿、お待たせしました。

経丸

片倉ー。

霜河

貴様いきなり何者だ。

片倉

人に聞くときはまず自分から名乗れ。

片倉の切れるような目線が男を怯えさせた。

霜河

霜河鷹雪だ。

霜河の声はとても震えていた。

片倉

なぁ霜河殿、この兵を撤退させて欲しいのですが。

霜河

何を言うか。

片倉

速やかに撤退させないのならそなたの首をこの場ではねますぞ。

霜河

こいつは本気で殺る目だな。

霜河

お前ら退却だぁー。

伊原

はっー。

霜河達はものすごい勢いで撤退して行った。

片倉は急いで経丸のところに駆け寄った。

片倉

殿、ご無事でしたか?

経丸は思わず片倉を抱きしめた。

経丸

ありがとう片倉。

片倉

我は当然の事をしたまでです。

経丸はほっとし涙を流した。

この出来事が霜河との長い闘いのきっかけになることをまだ、誰も知らなかったのである。

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