士郎、経丸の二人は森の中をさ迷っている。

経丸

士郎まだ着かないの?

士郎

すみません殿。道に迷いました。

経丸

えーえー自分の家に帰るのに道に迷ったぁー。

経丸は少しあきれた。

士郎

ヤバイ。殿があきれてる、早く道を見つけなくちゃ

話は少し前にさかのぼる。

経丸

片倉。今から出かけてくる。

片倉

どこへですか?

経丸

士郎の喘息の薬を一緒に取りにいく。

片倉

何をおっしゃられてるのですか殿。そのようなものは1人で行かせるべきです。

経丸は片倉の意見を無視して

経丸

城を頼んだ片倉。

片倉

とっと殿。

経丸はあっという間に片倉の前を去っていった。

そして現在に至るのである。

経丸

こっちからなんか気持ち良さそうな風が吹いておるぞ息抜きに行ってみようか。

経丸なりに気を使ったのであろう。

士郎

はい。

2人は走っていく、すると美しい竹林の森が目の前に広がった。

士郎

ああここ見覚えがある。あーあ

士郎

ここです。

経丸

何がだ。

士郎

思い出したんです、この先です。

2人は竹林の森を全力で駆け抜けていくすると寺の門が見えた。

経丸

大きな寺だなぁ、うわぁー砂にきれいな模様が描いてある。

士郎

殿、おしょう様に見つかると面倒だからこっそり取りに行きますよ。

士郎は物陰に隠れた。

士郎

殿、いきますよ。

と言いながら士郎は後ろを向いた。
すると。

士郎。今までどこに行ってたの。

士郎

うわぁー。凜ねぇちゃん

士郎はびっくりして尻餅をついた。

凜は経丸に向かって

どうも、士郎の姉みたいな存在の小鹿凜です、よろしく。

と軽い挨拶をした。

経丸は凜に圧倒され小さい声で返事をすることしかできなかった。

そちらの方、もしかして士郎の彼女、やるじゃない士郎。

と凜は士郎の脇腹を肘でこずきながら言った。

士郎

違うよ凜ねぇちゃん、この方は天羽経丸様だよ。

天羽?天羽ってもしかして城主の天羽?

士郎

そうだよ。凜ねぇちゃん

凜はびっくりし、そしてすぐ経丸に向かって

これは、ご無礼な態度を取り失礼しました。

と頭を下げた。

経丸

いや、気にしないで

ありがたきお言葉。

士郎先に言ってよね、まったく。

あっそうだ、殿様を連れて来たのならすぐにおしょう様に言わなきゃ。

士郎

いや、凜ねぇちゃん言わなくていい。

と士郎が言った時にはもう凜は寺に向かって行ってしまった。

婆や

士郎。

と大声で叫んで婆やは士郎のところへ走ってきて、ハグをした。

婆や

今までどこに行ってたの心配かけて。

彼女は士郎の帰りをずっと待っていたのだった。
おしょう様はぶっすとした顔で2人を見ていた。

そしてその夜、士郎と経丸はご馳走を振る舞ってもらった。

どうやって今後の事をおしょう様に話を切り出そうか士郎は飯を食べながらずっと緊張しながら考えていた。

士郎

もう考えてもしかたない。なるようになるだろう。

士郎は飯を食べ終わったあと覚悟を決めて立ち上がっておしょう様に向かって震えた声で

士郎

おしょう様、話があります。

おしょう様は一呼吸おいて

和尚様

俺の部屋にこい。

と言って部屋に戻って行った。

士郎は戸の前に立ち、ふぅーと息を吐き

士郎

気持ちー気持ちー

士郎

失礼します。

和尚様

そこに座れ。

士郎

失礼します。

和尚様

なんだ話とは。

おしょう様は眉間にしわを寄せながら士郎を見た。
士郎はそれに対して少しびびりながらも

士郎

俺はこの寺を継ぎたくありません。

和尚様

何を言っておるんだ。ダメだ、お前はこの寺を継ぐ約束したろ。お前がこの寺を継ぐと言うから継ぐまでは髪を伸ばすことを許してやったんだろ。今さらこの寺を継がないとは何事だ。

士郎

すみません。俺にはやりたいことができたんです。

和尚様

なんだ、言ってみろ。

士郎

殿と共に戦に出て殿とこの国を平和にしたいんです。

和尚様

バカかお前は、寺で育った奴が殺生をしていいわけあるか。ダメに決まってんだろ。

士郎

すみません。でも俺はやりたいんです。
お願いしますやらしてください。

士郎は土下座をして言った。

和尚様

ふざけるな

おしょう様は士郎をビンタした。

和尚様

誰のおかげでここまで育ったと思ってるんだ。お前は黙って寺を継げ。

するとさっきまで黙ってふすま越しに2人の話を聞いていた婆やが、ふすまを開け部屋に入ってきて

婆や

あなた、それはあなたの希望を押しつけてるだけじゃないですか。

和尚様

なんだと。

婆や

私達のすることは子供に自分の希望を押しつけるのではなく子供を幸せにすることじゃないんですか。

和尚様

しかし寺の跡継ぎがいなくなるかもしれないんだぞ。そしたらこの寺だって潰れるかもしれないんだぞ。

婆や

士郎だってあなたの気持ちがわかる子だからお寺を継ぎたくないと言いづらかったと思うでも覚悟を持ってあなたにしっかりと話したことを認めてやってください。

士郎

婆や

士郎は婆やに感動して泣きそうになるのを必死にこらえた。

和尚様

もう知らん、勝手にしろ。

おしょう様は黙って部屋を出ていった。

そして士郎達が出ていく朝。

婆や

士郎元気でね。喘息には気を付けてね。なんかあったらいつでも帰っておいでね。温かいご飯作って待ってるから。

士郎

ありがとう婆や。じゃあ元気で。

士郎達が立ち去ろうとしたその時

和尚様

おい待て士郎、これ持ってけ。

おしょう様は士郎に真っ赤なハチマキと【*ゆがけ】
を渡した。ゆがけには、〔常に前を向いて生きろ天下の英雄になれ〕と書かれていた。

*ゆがけ【手袋みたいなやつ】

和尚様

経丸様どうか外岡士郎をよろしくお願いします。

おしょう様は経丸に頭を下げた。
士郎は頭を下げるおしょう様にびっくりしてつい

士郎

おしょう様!!

と声がでていた。

経丸

私が面倒見るので安心してくださいおしょう様。

和尚様

ありがとうございます。

と一言言って頭を下げて去っていくおしょう様に向かって。

士郎

おしょう様、ありがとうございました。

おしょう様はそれを聞いて目を潤ませながら

和尚様

士郎頑張れよ。

早足で寺に戻って行った。
そして士郎達も寺を後にした。

士郎

殿、ここでお昼にしましょうか。

経丸

そうだな、そうするか。

士郎は婆やからもらったおにぎりをリュックから出した。
すると茂みが

士郎達は驚いて思わず抱き合ってしまった。
茂みから・・・

わぁー

凜がでてきた。
2人は抱き合ったまま固まっていた。

もしかしてラブシーンだった?

経丸

ちがーう

経丸は顔を真っ赤にしながら大声で言った。

士郎

ところで何で凜ねぇちゃんここにいるの?

なぜって、士郎を面倒見るのは殿1人じゃ大変だからねぇ。

経丸

ってことはお主も家臣になってくれるのか?

もちろんでございます。

経丸

やったー。優秀そうな家臣ができたー。

士郎

殿、俺の時はそんなこと言わなかったのに。

経丸

いやそれはだなぁ。あっそういえばだな。

士郎

ごまかさないでくださいよ。殿。

こうして新たな仲間もでき物語は進んでいくのである。

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