――ハル達が訓練場に入って二週間後。訓練所生活最後の日。朝の食堂。

ハル

まぁ~まぁ~
なんとかなるっすよ。

ダナン

そーそー。
あんなもんなくても
やっていけるって。

ジュピター

負け惜しみにしか
聞こえないぞ、旦那。

ダナン

あんなもん出す前に
叩き潰した方が早ぇ。

タラト

ハル……、ハゲ
なんと、かなる。

リュウ

大丈夫かなぁ~、
って、まぁ~
なんと、かなる、かぁ~。

アデル

下手に使うより
武器の攻撃に専念した方が
いいかもしれませんね。

ユフィ

私はこの三人が
刻弾を操ったら
とんでもないことが
起こりそうだから、
出せないままでいいわ。

 朝食後、講堂に集合の予定になっているハル達。朝のメニューをひとしきり胃に放り込み、茶の香を楽しみながら、刻弾の話をしていた。

 現在刻弾を出せていないのは、ハルとダナン、そしてタラトだ。それが出せなくても、エンゲージ・コアが身体に馴染んでいれば訓練場を出られるのだ。

メナ

皆、身体が第一だから
無理しちゃ駄目よ。

ハル

大丈夫っすよ。
メナも早くここを出て
合流するっす。

アデル

メナは昨日から
刻弾の訓練ですよね。

メナ

皆より一週間遅れだけどね。
私も出せるか心配。

リュウ

まっ、この三人よりも
早いのは確かだろうな。

あら、メナ。
おはよう、今日もよろしくね。

メナ

あ、ツバキ。
ニックもおはよう。

 少し離れた食堂の出口から、声が聞こえた。メナが昨日知り合った訓練生で、刻弾の講義の時に席が隣だった者のようだ。

ツバキ

私達少し早く行って
刻弾の自主練するの。
メナも一緒に来ない?

ニック

僕はもうちょっと
ゆっくりしたいんだけど
コイツが……

ツバキ

何か言った?

ニック

いや、
メナ、待ってるぞ~。

メナ

わかった。
私もすぐ行くね。

 二人ともメナと馬が合ったようで、昨日出会ったとは思えないくらいの距離感だ。メナは、まだ暖かい茶を一気に飲み、食器を片付け始める。

ユフィ

メナ……。
少しのお別れだけど、
お互い冒険者になったら
いつでも会えるわ。

リュウ

焦らずにな。
きっとうまくいくから。

メナ

うん。
私も強くなる。
みんな元気でね。

 ハル達は朝食後、訓練場を出て冒険者になる手続きが待っている。メナとは一旦ここでお別れになることは誰もが理解していた。

 笑顔で決意を表すメナの前で、ハルは泣きじゃくるしか出来なかった。

 ~錬章~     58、欷歔

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