Wild Worldシリーズ

レダ暦31年
砂の町のメール屋さん

10

  

  

  

 眠れなかった。

体は疲れているはずなのに眠れない。

リウトにとってこんなことは初めてだった。



隣でユニが眠っているせいかもしれない。

部屋を分けることを提案したのだが、一緒でいいとユニが頑なに譲らなかった。

 自分が女の子だということをきちんと理解しているのだろうか……


 ユニは瞳を閉じたままスヤスヤと眠っていた。

ユニ

Zzz

リウト

……僕だって男なんだよ

 ユニの寝顔にリウトがぼやく。

ついつい無防備な胸元に目が行ってしまい、リウトは頭を振った。


 眠れないものは仕方ない。

少し動こうと、リウトは布団を抜け出した。





















  

 部屋を出ると、暗い中に光が見えた気がした。

 吹き抜けの螺旋状の階段を見上げ、引き寄せられるように昇っていく。

リウト

 勝手に動き回ったら怒られるかな?

 そうも思うが、好奇心のほうが強かった。


 一段一段が高くて、手すりにつかまって上った。

時々、段の途中で何故か本や物が置かれていて、丁寧に避けて通った。

それでも、視界に入らなくて踏みつけてしまったものもあり、さらにそれで転びそうになったりして慌てて態勢を整えた。


 4階ではアルトが眠っているはずだ。

起こさないように注意して上った。

5階を通り越して、頭の上の扉を開けた。

鍵はかかっていなかった。

 屋上に上ってみると、澄んだ夜空に小さな小さな星達が、パノラマいっぱいに広がっていた。

両手を広げると、夜空を抱きしめているような感じになって、胸がいっぱいになる。

輝く星達はきれいだった。

リウト

わぁ……

 思わず感嘆の声を漏らす。

 無意識に手を伸ばしてみるけれど、もちろん掴めるはずもなかった。



 星なんて久しぶりに見た。

砂の町の夜は寒すぎてあまり外へ出ない。

昼夜で気温差がありすぎるのだ。

それでも、時々見ることのあった砂の町の星達は、もっと自己主張が強く、色々な色に輝いていたと思う。

それに比べると、ここの星達は控えめで、せつなく光っていた。


夕暮れに見た夕焼けみたいに儚げだった。

アルト

眠れない?

 星空に魅入っていると、後ろから穏やかな声がかけられた。

アルトだ。

月明かりに照らされる彼は、今にも消えてしまいそうに儚く微笑んでいた。

アルトはリウトの隣に並び、同じように星達を見上げた。

リウト

うん。なんだかちょっと……

 星たちを眺めながらリウトは言った。

夜のせいか、声が低く落ち着いている。

アルト

知らない場所だと眠れないタイプ? 
そんな風には見えないけど

 さりげなく失礼なことを言う。

だけどリウトは気にしなかった。

リウト

ううん。そうじゃないよ

ただ……

 座り込んだアルトに、リウトも倣って座り込んだ。

そして、言いにくそうに口を開く。

リウト

女の子と一緒だから……

リウト

 大体、ユニはそういうこと気にしなさすぎなんだよ

 拗ねたように言うリウトに、アルトは笑った。

アルト

なるほどね

リウト

アルトは?

 今度はリウトが聞いた。

夜の穏やかな会話は心地いい。

アルト

僕? 僕はね、普段は夜に起きているんだよ

リウト

え?

アルト

これで星を見てごらん

 どこからか取り出した小型の望遠鏡をリウトに渡す。

リウトはそれを受け取ると、片目を瞑って覗き込んでみた。

リウト

うわぁ……

 パノラマの星が、さらに大きく見える。

一つ一つの星の輝きまでとても鮮明に見えた。

アルト

星はね、みんな太陽に照らされて輝いているんだよ

リウト

え? 今太陽ないじゃん

アルト

うん。見えないだけで、この星の裏側で太陽はずっと輝いているんだよ

リウト

???

アルト

わかんない?

リウト

……うん

 リウトが正直に頷くと、アルトはクスクス笑った。

アルト

僕はね、星の研究をしているんだ
流れ星とか、この星が太陽からどれくらい離れているのかとか

リウト

それってそう簡単に分かるものなの?

アルト

分からないさ
だから幾千も計算式をはじき出して、毎晩星を見てる

 屋上には物が一切置かれていなかった。

5階が倉庫になっていて、必要な時に必要なものをマメに出し入れしているのだ。

リウト

……すごいんだね

アルト

昔は違法だったんだけどね
今では少しずつ認められてきたから、僕も頑張れるんだよ

 天文学が認めらるようになったのはレダ王のおかげだと、アルトは遠く輝く星に目を細めた。

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