お邪魔しま……


廊下の先に向かって声をかける。













もし此処が元の世界なら

ゴシック調のドレスを着た
無表情な娘が
出迎えてくれるはずだし





運が良ければ
その主人とも言うべき級友が
姿を見せるかもしれない。









そして
平行世界のひとつだとしても
やはり彼らはいるだろう。

歓迎してくれるかどうかは別として。




























もし
それより過去の世界なら












出迎えてはくれないだろうが

最奥の工房に
気難しい顔をした男がいる。










「ただいま」ではなく
「お邪魔します」と言ったのは

きみは「ただいま」と言えば、他人の家に我が物顔で上がり込めると思っているわけではないだろうね

……なんて嫌みが飛んでくることへの
予防線だ。












お邪魔しますでも同じこと言いそうだけど


少なくとも紫季や灯里が相手なら

「またくだらないことを」


馬鹿にされるだけで済む。














……













しかし誰も出てこない。














まずいな。
こういう場合は想定していなかった

が、そうも言っていられないんだろうな

扉を開けた時から感じる
血生臭さ。


何も起きていないと
考えるほうがどうかしている。

いや、むしろ放置したらマズい


警察官の勘、などと
大仰に言うまでもない。



この場に居合わせた
10人が10人とも

自分と同じことを思うだろう。







晴紘は廊下に足を進めた。

























































































































しかし
誰もいない。















臭いの

原因もわからない。
































































家の中をさまよい歩くうちに

その足は












時計塔に向いていた。























pagetop