隆斗を消したあの日から、
香織と食事をしたり出かけたりする事が多くなった。
香織は気が利くし一緒にいて楽しい。
その上容姿は文句の付けようもないくらいの美人だ。
俺は香織と出かけるたびに香織の好みのタイプの人がいれば容赦無く消した。
その結果俺たちは付き合う事になっていた。
毎日が幸せだった。
邪魔なモノは全て消してしまえばいいのだから。
俺にとって、思い通りになる事が何よりの快感になっていた。

それから俺は香織と将来の事を相談した。
この先必要なのは金だ。
手っ取り早く給料が安定した職を探すことにした。

優介!この仕事どう?

こういう肉体労働苦手なんだよなぁ 何かいい仕事ないかなぁ・・・

求人広告やインターネットで何百件と探した。
香織も手伝ってくれた。
それでも俺の求める条件に合うものがない。
気づけば再就職をすると決めてから約3ヶ月が経っていた。

ねぇ、優介もそろそろ再就職先決めないと生きてけないよぉー!

香織だって週4日で1日4時間だけのバイトじゃんか、そんな変わらないだろ!

私は働いてるの!!優介は男だからもっと私の為に働いてよぉ!てかそんな事もできないの?やっぱりニート優介なんかより賢史の方がよかったかも 真面目で結構儲けてるっぽいし

賢史と比べられてカッとなった俺は、香織を押し倒しポケットに手を入れた。
初恋の相手にだけは使わないと思ってたDead Shadowを躊躇なく10滴垂らした。
香織はほんの数秒で消えた。

俺は、俺なんだ。
賢史は賢史なんだ。
俺と賢史を比べないでくれ。
結局誰でもいいんじゃないか。
全部香織が悪いんだ。
また自分を正当化して罪悪感を全てかき消した。

しかしこのままでは生きてけないと思い、再び賢史に仕事を紹介してもらうべくいつものカフェへ呼び出す。

賢史、何かいい仕事ないかな?

なかなかないけど、こんなのはどうだ?

イベントスタッフ
経験者優遇
月給18万
着ぐるみを着て踊ったり、子ども達と楽しくチャレンジ!!

18万?子ども達と楽しく?ふざけんな!ガキ扱いしやがって

本気だよ、本気、結構楽しそうじゃね?

賢史のところで雇ってくれないか掛け合ってくれよ

お前の学力じゃ無理だよ これでいいじゃん?

俺がバカだってのか?

俺の会社は超一流企業なんだぞ。そこにアルバイトで生活してるお前が来らる訳ないじゃん

賢史の言葉が俺にとどめを刺すかの様に突き刺さる。

賢史お前だけは俺を対等に見てくれてると思ってたのに

そう言ってバレないように賢史の影にDead Shadowを数滴垂らした。
今回は苛立ちではなくただ悲しかった。
数滴にしたのも、せめて消えるまでの時間が長くなるように。

俺は帰宅後すぐ眠りにつこうとした。
いつもならベッドの中は安心するはずなのにココロが引っ掻き回された様に傷だらけになった気分だった。
いろいろ考えているうちに、今まで抑えてきた罪悪感が一度に押し寄せてきた。

俺は・・・みんな消した・・・いらないモノ・・・依頼されたモノ・・・嫌いな人・・・そして大切な仲間まで・・・

テーブルの上にいつも置いてあった、幼馴染四人の集合写真はいつだか俺だけが残っていた。

俺はもう死んだも同然だよ・・・あのルールの死なないは嘘なのか・・・ふざけんなよ・・・こんなのはもう耐えられない・・・

俺は何滴も何滴も自分の影にDead Shadowを垂らす。

今からそっちに行くからな・・・ごめんよ・・・

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