【第十五幕】

『拠点移動からの再スタート、やり残したこと』

 





























 父の転職に伴って、俺達家族は県外に引っ越すことになった。


 このマンションに住んでいられるのもあと残り一週間程度だ。

 
 学校でのお別れ会は済み、現在は自宅待機中である。


 今日の朝もいつも通り、母から兄貴の説得を頼まれたので、観たいテレビ番組を我慢しつつ録画ボタンを押し、失恋男の部屋に向かった。
 

 











 なるべく大きく響かせずだが、それなりに相手に伝わるようにドアをノックする。




そろそろ起きなよ

まだ拗ねてるの?






























外で竹内さんが待ってるけど……

な、なんやて!?

そんなわけないでしょ

なんて最低な金髪なんだ

ハメやがったな!

これは地毛だよ

だってそろそろめんどくさいんだもん

いい加減諦めて引っ越しの準備しなよ







 真実かは定かではないけど、こちらの兄こと『ユウキ』には竹内さんという立派な彼女さんがいたらしい。

 『いた……』という表現をしているのは、本当に実在するのであればなぜ今回遠くに行ってしまう兄貴に会いに来ないのか、それが不思議だからだ。

 毎日日記を付けてたくらいだから、大切な人がいたのは事実だろうけど。




兄貴、本当に彼女さんなんていたの?

ユウキ

……いた

名前は?

ユウキ

竹内マチちゃん……

じゃあなんでその竹内さんは会いに来ないし、逆にキミは行かないの?

ユウキ

ひ、引っ越すなんて言ったら……別れようって言われるじゃん!

い……いやいやいや!

そんなことはないでしょ!

電話とか手紙(メール)で連絡し合えばいいじゃんか!

ユウキ

遠距離恋愛はだめなんだ!!!!!

なんでだよ!!!!!

ユウキ

う……

……なんかあったの?

ユウキ

だって……ふ

ふ?

ユウキ

ふ、不倫とか……怖いじゃん

……

ユウキ

……

お……















お前らいくつだよ……。
















第十五幕 終




【真相編】 第十五幕『拠点移動からの再スタート、やり残した事』

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