2025年4月12日(土)
10:55 AM








とある施設内にて。






















ヒルトンイーグル

まったく、ミシガンダイバーからの調整の依頼も並行してるてぇのに……。

ヒルトンイーグル

こっちの要望を聞けないなんてなぁ
どうなんですかねぇ?

これより、最終チェックに入りまーす。

ヒルトンイーグル

さて、今回はオマエさんの調整も兼ねてるわけだが……。

最終チェック、オッケー!

ヒルトンイーグル

本当に大丈夫なのかねぇ?

大丈夫です、
逃げた魚は魚籠に入りまーす。

ヒルトンイーグル

まあいいやぁ。
いきなり当たりを引くとは
限らんだろうし、
俺は高みの見物と行きますかぁね。

ヒルトンイーグル

じゃあ、たのんだぁよ。

あいあいさー!






























2025年4月12日(土)
11:02 AM









とある施設前。





























優一

この塀の向こうに……
僕の地獄が待っている……。





ピタッ




優一

あれ?




じー……。





優一

住吉さん、
立ち止まって塀の上を見上げて……。
いったい、どうしたんだろう?
















この塀の内の樹……。

ここの大きな樹を見ると、どうしても思い出してしまうな……。

だいちゃん……。












* * *

















だいちゃん

あかねちゃん!

あかね

なあに?
だいちゃん。

だいちゃん

ぼくね、おおきくなったら
あかねちゃんをおよめさんにする!

あかね

じゃあ、あたしはだいちゃんを
おむこさんにする!

だいちゃん

じゃあ、あかねちゃんにこれあげる!

あかね

わぁ、きれい!

だいちゃん

……こんやくゆびわ
……なんちゃって。

あかね

……だいちゃん。







だいちゃん

えへへっ

あかね

ふふふっ























* * *


















あかね

あれ?
だいちゃん……どこ……?



























だいちゃん
あかね

いた!
だいちゃん!

あかね

となりにいるのは……だれ?
しらない人……。







あかね

まってー!!








あかね

おじさん、だいちゃんをどこへ連れて行くの?

……。

だいちゃん

……。

あかね

だいちゃんも……
だいちゃんもなにか言ってよ。

……いいかい、おじょうちゃん。
このことはもう忘れるんだよ。
いいね?

あかね

え?






































雲散霧消《ロスト》










































* * *

















まるで切り取られたように
この場面だけが思い出される。

それまでがどうだったか。
その後どうなったのか。
全く思い出せない。

アタシは物心ついた時から、だいちゃんの行方を追ってきた

くすのき園の権利を数年前に
奪ったクシナダ。
そこから園の資料を拝借したが……。

そこにはだいちゃんだけでなく
アタシの記録もなかった。

つまり、アタシは
改竄された資料を掴まされたんだ。

もはや雲をも掴むような状況だが……。
改竄されていない情報が施設内にまだ残っているかもしれない。

今はそれに掛けるしかない!

優一

添田さん、顔が怖いよ。
もしかして、緊張してるの?

キッ!

優一

ヒィ!

いいかァ、大林ィ!
部屋で書類らしきものを見つけたら
背表紙だけでいいから写真を取って来い!

優一

しゃしん?

わかったら、
返事ィ!

優一

はいぃぃ!


























着いたわ。

優一

ここかぁ……。

露江

えー……。
オマエら、こんな辛気臭いところで
デートすんのかぁ?

外野は
すっこんでろください。

八重桜子

まあいいわ。
私も一度ここへ視察に来たかったことですし。

学人

生まれ育ったところの歴史を学ぶ……。
良い心がけじゃ。

学人

では、さっそく受付に
殴り込むとするか!

肝田

マナビヤは物騒だなぁ……。


















いらっしゃいませ。
神代市郷土資料館へようこそ。

ご観覧の方は、順番にこちらのゲートをお通りください。

優一

え……
ゲートって……これ?

八重桜子

もしかして、私にこれを
くぐれと言うのかしら?

あ、伊集院さま。

八重桜子

あら、あなた……。
うちの学校の1年生の制服ね。

はいー。
1年の杜若 愛《かきつばた あい》
って言います―。

八重桜子

そう、愛さんね。
ところで、こんなところで
何をしているの?

わたしですかー?
家が貧乏なので生活費のため、
しがないバイト三昧です。
えへへー。

八重桜子

そう。それは大変ね。
ところで、わたしもこのゲートを通らなければダメかしら?

いいえー!
伊集院さまは別格ですのでー!
こちらのVIP入口よりどうぞー!

八重桜子

あら、ありがとう。




露江

Oh、ブラボー!
VIPルートから入れるなんて、気分イィ!
ヤエと来て正解だな!

学人

……つまらんな。
用意された道など。

肝田

当・然!

マズい……、VIP扱いだと!?
このままだと目的の部屋に行けない……。





おっとぉ!

露江

ちょ!

学人

門前払い、とな?

肝田

ブヒッ!

伊集院さま以外は、通常通りゲートをお通りくださいねー。

露江

なんだよ、ヤエだけ特別扱いかよ。

……助かった。
これでゲートのチェックを受けられる。

露江

ピッ!

カガミノ ユエ
異常なし。

学人

ブー!

マナビヤ ガクト
危険物所持。

肝田

ブッブー!

カンダ ツグオ
重量オーバー。

ビー!

非定住者。

優一

ビー!

非定住者。

それでは、非定住者反応が出た
お二方はこちらへいらしてください。

学人

俺らはいいのか?

はい。

ただ言いたかっただけですから。

肝田

ブヒィ!!

学人

ふん、なかなかやるな。






















それでは女性の方は私と、男性の方はこちらの男性スタッフと共にそれぞれの手続き所へ入ります。

では、男性の方。
こちらへ。

優一

は、はい。

待て、大林。

優一

……添田さん?












ぱち!

優一

住吉さんのウィンク!

頼んだぞ、大林。

さあ、行きますよ。

優一

はいはいはいはーい








では、我々もまいりましょう。



























ではまず、こちらの書類に
同意のサインをお願い致します。

はい。

スラスラスラ……




































かつての教室を
そのまま使用した簡素な部屋だな。
書類を入れるような収納スペースは皆無……。

コッチはハズレ……か。
















はい、どうぞ。

それでは、
これより身体検査を行います。

着衣を全てこちらへ入れてください。

え!?
し、身体検査ァ?

はい。

そんなもん、
必要ないだろでしょ!?

いえ、ご覧のように、こちらに明記されておりますし、同意の署名もいただきました。
それに、そのための男女別室です。

なんだと!?

しまった、周りに気を取られすぎていたか……。

ご安心ください、スタッフは同性の者しかおりませんので。

くそ……。相手は一人……。
消すのはやりすぎだとして、
いっその事身動きを封じるか?

いや……。
本当にただのスタッフなら
巻き込むわけにはいかない。

脱げばいいんでしょ、脱げば。

はい。






ぬぎぬぎ……

銃は服の内側に隠すしかないな。

さっ!

ほほー。

あ、帽子は別にいいですよー。

カラダが見たいだけですから。
えへへー。


脱ぎましたよ。

では、こちらは預かりますねー。

いやぁ……。
それにしても、見かけによらず
いいプロポーションですねぇ。

ピクッ

あ……あんまり
ジロジロ見ないでよ。

いえいえー。
羨ましいのです―。

その幼顔の下に秘められた
ダイナマイトバディ。

つぅぅー……

ちょ…触らないで……
くすぐったい……
あ……。

脱いだら
男性のハートを鷲掴みですねー。

ほ……放っておいてよ!

そして、そのうちに秘められている
鍛え上げられた筋肉と
特殊メイクで隠した銃創。

!!

【照合結果】
99.9%の確率で
子猫ちゃんと判明。

……オマエ、何者だ?









優一

すみ……添田さん!
写真とったよ!
あと、これ!

くすのき園卒園者名簿原本

!!!

……えー。
写真…ですかー?

優一

って……あれ?

バカ、いま来るな!

優一

そ……添田さん…

優一

なんではだか!?

……なんで君、
部屋から出れたのかなぁー?
その手に持ってるの何かなぁー?

優一

あわわわ……、
ご、ごめんなさーい!!












上手く逃げ切れよ……大林。

ふぅー。
まったくもー。

怪しい人物を一人逃しましたー。
主要経路は閉ざしてるので、
一本道になっておりまーす。

到着見込みは5分後ですので、
対処願いまーす。

了解了解っと。

さて…邪魔が入っちゃいましたねぇー。

……どうやらあなた方は
私達が求めていた人物のようですねー。

そうかい。
そりゃ光栄だな。

上からは生け捕れって言われてるので……。

せっかくですから、
適度に動けなくなるくらい、
私と遊びましょうね。
えへへー。

……上等……だ。























年下の女の子

つづく

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