2025年4月12日(土)
10:40 AM









とあるオフィスにて。



















田母神

……時間だな。

田母神

ピッ

……ギオンショウジャノカネノコエ

田母神

ショギョウムジョウノヒビキアリ

こちらヒルトンイーグル。
『お母さん』に状況を報告しますよっと。

田母神

手短に話せ。

予定通り、網を張り巡らせましたよ。
あとは獲物がかかるのを待つだけです。

田母神

首尾は上々なようだな、
ヒルトンイーグル。

ところで、『お母さん』。
ミシガンダイバーに伝えてもらえやせんかね?
『もっと、愛を』と。

田母神

なぜだ?

いやね、一人でもいいんですけどね。
網目を細かくするにゃぁ、あと三人位はほしいんですよねぇ。
そりゃ、今の人数でも俺ぁ大丈夫ですよ?
でもね、
お頭直々の案件と来た日にゃぁね、
失敗したくないわけですよ。
わかります?

田母神

贅沢を言うな。
お頭の勅命とはいえ予算もある。
今ある状況で賄え。

……了解了解っと。
あーあ、寂しいなぁ。

……プッ。






田母神

ふぅ……。

田母神

ブラボーフェスティバルのような要件男も扱いにくいが、ヒルトンイーグルのような話の長いヤツはもっと好かんなぁ。






























2025年4月12日(土)
10:45 AM






とある裏通りにて。





















優一

てへへ……。

……。

優一

でへへへへへ……。

おい、大林。

優一

でぇへへへへへへへ……。

おい。

優一

はい。

マヌケな面下げてるところ悪いが、オマエは聞きたいこととかないのか?

優一

き……聞きたいことって?

例えば……
今、どこへ向かっているとか
気にならないのか?

優一

ぼく、す……添田さんとなどこでも行けちゃうから大丈夫!

……そうか。




八重桜子

ど、どこでもイけちゃうですって!?

露江

可愛い顔して、
ふたりともなかなか高度な事
してるんだな。

学人

ふん、俺だって地の果てまでも
この足のみで行けるぜ。

肝田

だがしかし、
俺の世界にまでは来れまい。

お願いだから、
ラブラブな
二人の邪魔するなら
すっこんでろ
ください。

八重桜子

あら。
じゃあ、少しだけゆっくり歩くとしますわ。










はぁ〜……。

優一

すごい溜息だね、添田さん。
僕なんか悪い事した?

いや、アタシが
自分の見る目の無さに
嫌気が差しただけだ。

とはいっても、コイツの助けが必要なのは紛れもない事実だ。
ちゃんと説明しておこう。

……あのな…

優一

ところで添田さん。

お、おう。

優一

なんで僕とデートする気になったの?

コイツが時折みせる
人の考えの先回りをする感触は
ホント苦手だ……。

実はオマエに頼みたいことが
あったんだ。

大林にしか頼めないことを。

優一

……僕にしか?

神代市には条例で定められた定住猶予期間というのがあるのは知ってるか?

優一

う、ううん。
今はじめて聞いた。

まあ、仕方ないな。
それがオマエを選んだ理由でもあるからな。

神代市に転入した場合、転入後30日間は定住猶予期間者という扱いになる。

優一

ということは、僕は定住猶予期間者?

そうだ。

その後、30日が過ぎると晴れて定住者となり、皮膚下に市民章を兼ねたマイクロチップが埋め込まれるんだ。

優一

へ……へぇ。

まぁ、この条例も5年ほど前に施行された、比較的新しい条例だ。
市民の中には定住者なのにも関わらず、マイクロチップを持たないものもいる。

だが、うちの学校……一高においては、2年の秋に市民章の一斉導入が行われる。一部の例外を除いてな。

優一

そうなんだ。じゃあ、添田さんもマイクロチップを埋められてるの?

アタシは埋められていない。

優一

え?

アタシはその一部の側だ。

優一

どうして添田さんはその一部……

その件に関しては
これ以上聞くな。
アタシも答えない。

優一

は、はい。

続きだ。

これから向かうのは、旧くすのき園。
現在の名称は神代市資料館というところだ。

優一

旧……くすのき園……。

最近できたばかりの神代市資料館は市外の人間にはまだ一般公開されていない。

そして、その選別には市民章のマイクロチップを利用していて、市民章を持つものは特に手続き無くゲートをくぐることができる。

優一

うん。

しかし、市民章のマイクロチップが無い者は性別ごとに別の部屋に通され書類に依る手続きを行わなければ入れないんだ。

優一

つまり、それが僕やすみよ……

キッ!

優一

……添田さんってことなんだね。

あぁ。

優一

んー、だからといって別に僕と行く必要性がわからないなぁ。

アタシの目的が
その部屋への侵入だとしても?

優一

え?

ニヤリ

優一

で、でも、それだって一人で行けば
入れるんじゃない?

アタシは女だ。

優一

うん。

大林、オマエは男だ。

優一

うん。

……。

優一

……。

え?わからないの?

優一

えっと、なにがかな……。

手続きは男女で別々の部屋に
通されるんだよ。

優一

うん。

女の部屋はアタシが担当する。

優一

うん。

男の部屋は誰が担当すると思う?

優一

……。

……。

優一

……ボクぅ!?


















さあ、資料館が見えてきたぜ。
頼んだぞ、相棒。

優一

ひ、ひえぇぇ。























僕である理由《ワケ》

つづく

第16話 僕である理由《ワケ》

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