過去を、お知りになりたいのですか?











考え込んでいる晴紘の耳に
唐突に問いが投げられた。



え?



どこかで聞き覚えのあるこの流れ。

と、思っていると



紫季は胸元から
見覚えのありすぎるものを取り出す。

そ、れは




















過去を知りたいのでしょう?

この鍵は、あの時計塔の彼女が
取り出して見せたもの。

何度も何度も
過去を巡ることになったきっかけ。


俺自身、時計塔の彼女に
過去に戻せと訴えている。





でも。
























思い出せ。
最初にその鍵を見せたのは

過去をお見せ致します

紫季だ。
時計塔の彼女ではなく。






















過去を知りたいのでしょう?

ちょ、待て



これは本当に紫季なのか?
それとも、

お前は……誰だ



何故、過去を見せることができる?
この娘は何者だ。


灯里の妹でもなく、養女か弟子かもわからず



思えば他の誰よりも
この娘の素性は知れない。

過去を、知りたいのでしょう?




この娘は、誰だ――?


























過去は……知った


晴紘は搾るように言葉を紡ぎ出す。

この娘は誰だ。
時計塔の彼女の何だ。
関係は?

矢継ぎ早に問いたいのを堪えながら。

それが全部でないことはわかっているけれど、情報ばかり与えられては飽和してしまいそうだ




目的も知らされないまま
何度も過去に飛ばされても

何も救えない。





それどころか

多すぎる情報は
真実を曖昧に覆い隠してしまう。


俺は救えるのか?
お前が望む結果を出せるのか?
このまま延々と過去をさまようばかりで、


自分は一箇所に腰を落ち着けて
推理することができない。

……あ、


それは今でさえ、きっと。




















思い出せ。


「助けてくれると信じています」


そう言ったのは紫季じゃない。
時計塔の彼女だ。








最初に
晴紘を過去に送り込んだのは
紫季だが


それ以外は全て
時計塔の、

撫子に似た女によって
なされている。












お前は、



決めるのはあなた次第。
そしてタイムリミットはあとわずか

タイム……リミット?



晴紘は時計を見る。

あ……

その時





鐘が、鳴った。











【陸ノ肆】十一月六日、六度・肆

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