……それを聞いてどうなさいます?

あ、いや、ええと





やはり土足で踏み込み過ぎただろうか。

この紫季は
面識があると言っても1年目。

灯里とふたりきりの生活に
いきなり転がり込んできた晴紘を
邪魔者だと思っていた頃の彼女だ。

……いや、それは今もなんだけど

でも




灯里本人に聞くのが
最も早い話なのかもしれない。

ただ

それが最善かどうかと問われれば
最善、とは言えない。








土足……だよなぁ




今ここに彼がいないのが
幸運だったのだろう、と
思う程度には。






でも。

……知りたいんだよ

灯里の母親がどうして西園寺侯爵の元に行ったのか、
父親がどうして西園寺侯爵から金を貰っていたのか





それが事件に関わるかどうかは知らない。
でも、わざわざ見せて来たのだ。

何かがあるのだろう。



そこに
時計塔の彼女の意思を感じる。








……まるで見てきたようなことを仰る

興味本意で言ってるわけじゃないんだ。
絶対に信じてもらえないと思うけれど、俺は

……見たんだ


























そして決定的なことは
何も見いだせないまま





戻って来てしまった。






























俺は過去を見た。
そこで灯里の母親は西園寺撫子と瓜二つだと聞いた



その顔のせいで
彼女は西園寺侯爵に乞われたのだろう。

憶測の域を出ないがそう思う。




そして彼女は
夫と子供を置いて
侯爵家へ行ってしまった。

金か
名声か

輝との生活に
嫌気がさしていただけなのか

真意を胸にしまったままで。


父親は侯爵から金を受け取っていた

ただのパトロンなのかもしれない。
でも何かが引っ掛かるんだ



援助を受けるとは思えない。
しかも相手は妻を奪った男。

輝の性分なら
突っぱねるのが妥当だという
気がしてならない。





そうであればいいという願望が入っていないわけではないけれど……

……

私はご両親とお会いしたことはないのですが



紫季は口を開いた。


















ただ、輝様と西園寺様の仲はそれほど良いものではなかったと記憶しております

灯里様がご幼少の頃、西園寺様の屋敷にいたことはご存じでしょうが、それを輝様は強引に連れ帰ったのだそうです

その時に、西園寺にいると殺される、などと物騒なことを仰っていたとか

殺……?

瞳子様が西園寺に行って1年も経たないうちに亡くなられたので、被害妄想に取りつかれていたのだろうと……それは西園寺の方からのまた聞きですが




灯里の母親は














西園寺に行って亡くなった。













森園に戻り、輝様が亡くなった後も西園寺に戻っては、と再三お声がけ頂いたのですが、そういうこともあって灯里様はおひとりでいらっしゃいます

……



会った時には
至って健康そうに見えたのだが。


でも殺されたってのは穏やかじゃないな









だが

奪われて
すぐに息を引き取ったと聞かされれば
輝がそう思うのも仕方ない。


同じ顔の人形作っちまうくらい未練タラタラだったもんなぁ……








【陸ノ肆】十一月六日、六度・参

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