日が傾き始めた頃に、あるビルの前まで足を運ぶ。
元職場の上司が許せなかった。
そいつは、新人の中で評判の良かった俺を毛嫌いし、同僚や先輩にありもしない噂まで流した。
挙げ句の果てには、俺のデスクの上にゴミを捨てに来る始末。
その後俺は、上司にそのことについて問い詰めた。
が上司に「キミが邪魔だから仕方ないじゃん」と言いわれ、腹を立てた俺は言い返し口論に至った。
それから一週間もしないうちに辞表届を提出。
嫌な記憶だ。
あんな上司がいなければ、今頃俺はどんな生活をしていたんだろう。
間違い無く今より良い生活ができていただろう。

キャー、河村部長カッコイイ!

英語なんて朝飯前さ

元上司の河村がビルから出てきた。
いつみても腹が立つ奴だ。
河村は、部長から課長に昇格していた。
あいつは、いつもいつも部下に残業させるだけさせて、自分は女性社員と定時退社後に食事。
その上、部下はいつもゴミ扱い。
そんな奴が昇格し、俺がアルバイト生活なんて許せない。
腹が立って歯ぎしりが止まらない。

タッタッタッ

フードを被り正面からすれ違う。
俺はポケットからDead Shadowを取り出し一滴垂らす。
手に力がが入ってしまって、余分に五滴も落としてしまい焦る。
まあ、効果はあるから大丈夫か。
そんなことを思いながら、何気なく振り返った。
河村は、どんどん透けていく。
次に、瞬きした時には消えていた。
雅樹さんのお兄さんの時は時間がかかり、今回は10秒程度で消えてしまった。
違いはさっきの余分な五滴。
ということは使用する量によってモノを消すまでのスパンが変動するのか。
俺は思わず感動していた。


帰宅し俺は、復讐できた喜びに浸りながら風呂に入った。
夏の暑さと、河村とすれ違う時の緊張感から出てきた汗を流すと、とてもスッキリした。
浴槽の中で、河村の次のターゲットを考える。

・・・

思いつかない。
復讐する様な相手が、河村以外にいなかった。

風呂から上がりベッドでいつもの様にSNSを確認していた。
いつのまにか俺は物足りない気持ちに襲われた。
俺の欲しいモノを手に入れれば良いのか。
この世には、欲しいものが数え切れないほどあった。
その中でも、小学生の頃から一番欲しいモノがあった。
それを手に入れるために、邪魔なモノは排除する。

この世の全ては、俺のものだ・・・

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