例えば……の話だけどさ

ああ

目障りな人を消す方法が知りたい

え?

例えば……の話だよ。嫌な人を私の視界から消したいの、もう二度と見ないようにする方法

君は殺人事件でも起こしたいわけ?

……例えばだけど、そういうことになるね

僕に聞くよりも、その読み終わった本に詳しく書いてあると思うけどね。物語の犯人の真似して行動すれば良いんだからさ。

なるほど

犯人は最後には探偵と警察によって牢屋送りだったな。お前が同じ行動を起こせば、結果も同じ

捕まることは怖くないよ

そもそも、君の力じゃ大人を殺すことは無理だ。不可能だ。

何で?

腕力も体力もない君には無理だ

えー……

二人どころか一人も殺せずに、返り討ちにあうのがオチだろうな。最悪のバッドエンド。

言い返す言葉がありません

だろ?

それじゃあ、戦い方を教えて。力がないのなら、力をつければ良いもの。

駄目だな

なんで?

僕は探偵になる男だよ。友達が罪人になる手助けはできない

そうだよね。ごめんなさい。変なコト考えていたみたい

いいよ。考えていることが変なコトだって、わかっていたから僕に相談したんだろ?

……そうだね。相談すれば止めてくれるから

それじゃ、改めて

君の力じゃ無理だから、やめてくれよな。加害者にも被害者にもならないで欲しい。被害者の君も、加害者の君も見たくないからさ

わかった。加害者にも被害者にもならないよ。

約束だ

よくよく考えたら体力作りなんて、やりたくないもの

少しは身体を動かした方が良いと思うけどな

   

間章 2


少年は我武者羅に走っていた。
走り出すしかなかった。

道行く人々が不審そうに自分を見ても気にならない。

ゴミ箱から新聞を引っ張り出す。
はしたない、とか声が聞こえて来たけれど今の少年の耳には入ってこない。

内容を読んで息を飲む。

□□放火殺人事件が発生□□
昨夜未明に街外れの洋館で火災が発生。

……

野次馬に紛れて、それを見た。
焼け焦げた屋敷は、形をかろうじて残している。

自警団によって作られたバリケードで中を伺うことは出来ない。

ツンとした異臭に顔を覆う。

遺体は二人らしいな

(遺体……まさか、あいつが………いや、あいつの力だけじゃ無理だろ。それはあいつも理解していたはず)

ルイ

人がざわめき始めた。
何故か、視線が自分に向けられている。

………


ちがう、視線の先は背後に向けられている。
振り返ると……

ナイト

話したいことがあるから、こっちに


無表情のままのナイトが立っていた。
周囲の野次馬など目に入っていない様子。

ルイ

えっと……

ナイト

ここじゃ話せないから、はやく


強引に腕を引かれて路地裏に入る。

ナイト

昨夜、火事になった

ルイ

らしいですね

ナイト

被害者は父親と母親の二名

ルイ

あいつは?

ナイト

無事だよ

ルイ

……それで、犯人は?

ナイト

わからない

ルイ

え?

ナイト

現場にあったナイフはあの子のものだ

ルイ

あいつには無理です

ナイト

分かっているさ。義弟も同じくらいに無理なんだ。あの二人には動機はあっても実行に移すまでの度胸がない。度胸があるのは……オレぐらいだな

ルイ

………

ナイト

残念ながら動機も度胸もあるオレにはアリバイもある。昨夜はバイトをしていた。バイト先にオレがいたことを証言できる人間はいる。

ナイト

火事があったことを知ったのだって、バイト先に近所の人が駆け込んできたからで……オレが駆け付けたときには、あの二人は救助された後だったさ……

ルイ

じゃあ誰が犯人……

ナイト

お前に話したのは、別に犯人捜しをしてほしいってわけじゃないからな

ルイ

僕は探偵じゃありませんよ。ただの探偵に憧れる子供です

ナイト

念のためだ。この件について、お前は考えなくて良い。お前はあいつと仲直りしてくれよ

ルイ

……はい

ナイト

お前たち二人の喧嘩は、お前たちだけの問題だ。今のこの状況はオレたち家族の問題なんだよ。

ルイ

………はい

ナイト

この街に帰って来た目的だけを考えるんだ。余計なことは考えるな!

ルイ

(余計なことは考えるな……か)


この件に関しては首を突っ込むな、そう言っている。
これ以上、踏み込めば……もっと良くないことが起きるだろう。

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