これはナンチャイの職場での話……。

 ナンチャイは金融業の窓口に立つ社会人。

 この日は後方で仕事をする支援係みたいな役割だった。お客様の数は金曜日の割りに少なく、何事もなく窓口の業務を終えようとしていた。

ナンチャイ

ふむ、
今日も定時に終われそうだな。

 定時に終わる事は重要で、会社の中でも一番費用のかさむ人件費に直結しているからだ。

同僚(主婦)

定時に終わったら
パチンコ行けますね。

 以前に話した同僚(主婦)だ。知らないとか覚えてない人は、第六話 『同僚・ザ・ギャンブラー』を読んでやって下さいな。めんどくさいし、そもそもやり方知らないので、リンクは貼りませんw

 余談だが、この人はいつも4時44分になると、時計を指さしてきて、『大当たり』だと喜んでいる。しかも純粋に。実に楽しそうだ。

同僚(主婦)

でも確変と違いますね。

 と、パチンコしない人を置き去りにするようなセリフを吐く。しかも純粋に。毎日同じ事を純粋に楽しめるというのは幸せだなって、遠くから思う。

ナンチャイ

おや!?
一向に待ち人数が
減らないぞ?

 後ろから見ていればよくわかるが、どこの受付窓口も手間取っているようだ。現在の待ち人数は一人。おそらく椅子に座っているであろうあのオバチャンだろう。

恰幅の良いオバチャン

あー忙し、あー忙し。

 少し待ち時間が長くなっているが、まぁ、あの恰幅の良いオバチャンも何かカバンをいじって何かしてるし大丈夫だろう。

 私はそう思って事務を始めた――。

ナンチャイ

チラリ

ナンチャイ

何!?
まだ進んでいない!?
これではオバチャンを
待たせすぎだ。

 オバチャンに視線を向けた時、オバチャンはついさっきまで何か作業をしていて、今、終わったところなのだろう。通帳を口に咥えた状態だった。

ナンチャイ

ブホッ!!!

 つい、カウンターと逆方向、お客様に背中を向けるポジションを取るナンチャイ。私は笑いを我慢出来ずにそうしてしまった。久々のビッグウェイブ。業務中、お客様が居るとか関係なく堪えきれなかった。

なぜならそのオバチャンが

咥えた通帳を

一瞬、モゴモゴさせたのだ。



私には、

恰幅の良いオバチャン故に

順番待たされすぎて

空腹のあまり

通帳を食べだしたようにしか

見えなかったのだ。

恰幅の良いオバチャン

モゴモゴモゴモゴ。
通帳美味い。
もぐちゃもぐちゃ。

ナンチャイ

ブホアッッ!!

 愛くるしいほどのオバチャン故に、勝手に脳内変換。通帳食ってる映像しか浮かんでこない。かき消そうとすればするほど、脳内に侵入してくる食べれる通帳。もう無理。

 私は職務を捨て去り、トイレに逃げ込む羽目になりました。

第十話 『待ちきれなくて』

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