――同僚とマクドナルドへ行った時の話。
(大阪ではマクド、一般的にはマックと呼ばれてますので、ここでは間を取って『ナルド』と表記します)

ナンチャイ

ふぃ~、今日もよく働いたなぁ。

同期

忙しかったでしゅ。
お腹もめちゃくちゃ
減ったっしゅよぉ。

 ナンチャイと同僚は、過酷な仕事を終え、空腹を抱えナルドへ入店した。

女性店員

いらっしゃいませ。

 満面の笑顔で迎えてくれる店員は、スマイル0円を体現しているかのように爽やかだった。

ナンチャイ

チキンタツタの
セットにしよっかな。

同期

ビッグマックの
セットにするでしゅ。

女性店員

かしこまりました。

 くどいようだが我々は疲れていた。同僚と無理矢理テンションを上げるため、『マックパーティ』をしようと意気込み、わざわざ仕事場から決して近くないナルドに来たのだ。


 暫くして店員がトレーを持ってテーブルにやって来る。やはりにこやかな対応で、爽やかこの上ない。


 我々は疲れた身体を癒すように、ポテトを炭酸で流し込んだ。

同期

やっぱり美味しいでしゅねぇ。

ナンチャイ

私はこのポテトが
好きなんだよぉ。

 我々はどちらともポテトから食べる主義らしく、聞いてみるとどうやら、冷めないうちにという至極全うな意見でまとまった。

同期

美味い!
美味すぎるでしゅ!

 同僚は呪文のように美味い美味いとビッグマックを頬張り始めた。何とも美味しそうに食す同僚を眺め、そのうち食レポでも任されるんじゃないかと、どうでもいいことを考えていた。

ナンチャイ

それにしてもデカイな。

 ビッグマックと名乗るだけあって、傍から見ていてもその大きさは伝わってくる。

別格。

貫禄。

圧倒的。

 BIGを冠するその威容は流石と言えるもの。他人が食べている物は美味しそうに見えると言うが、それとは別次元の気品を感じさせてやまない。


 私の食べ始めたチキンタツタも『分厚い方』というのが自覚としてあったので、手に持つチキンタツタと、目で観察するBIG MACの差に驚きを禁じえなかった。

ナンチャイ

今度はビッグマックを頼もう。

 心の中で食い忘れた鏡餅よりも堅い決意を固めた私は、ビッグマックに目を奪われたままチキンタツタにかぶりついた。

ナンチャイ

???

 違和感。キャラメル食べてるうちに、いつの間にか銀歯が取れてずっと口の中でこねくり回していた時くらいの違和感だった。

 私のチキンタツタには、

チキンが入ってなかった。

 そりゃあビッグマックが
大きく感じるはずだ。
私が比較対象として
持っていたのは、
バンズに野菜を挟んだだけの
ヘルシーなもの。



 チキンタツタチキン抜き。


 チキン抜きチキンタツタ。
 

ノーチキン・タツタ。
 

 出ました新商品、タツタ。


タツタ下剋上。


いやいやそもそもタツタって
何やねん!?
活舌悪い人からしたら
迷惑でしかないネーミング。
って、そんなん
どうでもいいねん。
取り敢えず店員に
この状況を説明せねば。

ナンチャイ

あ、あのぉ~……

女性店員

いかがなさいましたか?

ナンチャイ

えとその……
チキンがなくて……
タツタなんです。

 行列が出来る店で、そんな訳の分からない気違い申告をしたっていう話でした。

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