長い夢を見ているような感じもするけど、これだけ何回も朝を迎えているとなると、現実なんだろうな
…………
朝か
長い夢を見ているような感じもするけど、これだけ何回も朝を迎えているとなると、現実なんだろうな
夢だったとしても、面白ければなんでもいいんだけど
なんか面倒くさいことになってきているような気がする
戦争ねえ……生憎戦争には縁のない時代と国で生きてきたし……
そもそも魔法を使った戦争なんてファンタジーなもの、どんな規模になるのか見当もつかない
僕は可愛い女の子の作るご飯を食べて、だらだらと過ごす第二の人生を送りたかった
それなのに……
zZZ
なんでこんな人に呼び出されてしまったのか
顔は悪くないし、頭も悪くはないんだろうけど、どこか残念というか……
料理はまあ、おいしいけど……
ああ、お腹空いた。そろそろ起こすか
お姉さん、起きてください
んん……
って、まだ朝の六時前じゃない!
目が覚めてしまったんだから仕方がないでしょう
ほんと、いっつも早起きね……
夜寝る時間が遅すぎるんです。僕は夜の二時くらいに寝るのが習慣でしたから
二時!? そんな時間まで何していたの?
さあ……なんでしょうねえ
こっちの世界にはネットがない……これはみんな早寝になるわけだ
そういや、大統領からの続報とやらは出ました?
ああ……そのうち回覧板で回ってくるはずよ
なるほど
回覧板って……
さてと、朝ごはんは何にしようかな
卵焼きで
ああ、今卵きらしてるのよ
え
ダメ人間ですか?
卵をきらしたくらいでそこまで言われる筋合いはない!
まったく、お姉さんは詰めが甘いんですから
ほんと……シュウヤは生意気というかなんというか……
あ、回覧板かな
早くないですか
正規ルートの回覧板じゃないからね
え?
おっはー! ミロクっちいるー?
おはよう、ローザ。回覧板?
そーだよー
絶対漏らしちゃだめな情報だからねー
了解
あれ? 何か挟まってる
あっ
これはだめー!
え?
あぶなかったー……これはミロクっちにも見せられない“ひみつじょうほう”だから、みちゃだーめー
そう……
じゃ、それは見終わったら次の人に回してねー
はーい
…………
なんですか? 今の頭のねじが数本足りない女の人は
ああ……うちの学校の新聞部部長のローザよ
あんなんだけど、いつも誰も知らないような最新情報を掴んできてくれるの
まあ、情報を集めているのは彼女じゃないって噂もあるけどね
ほう……?
ま、そんなことはいいの……ええっと……サラシュ王国との戦争が正式に決定し、うちの学園長が今日の昼間にでも生徒全員を招集する……って
それはそれは……大変ですねえ
他人事……
そういえば、そもそもなんで対立してるんです?
んー……方向性の違いというか……
……バンドか
バンド?
いえ、なんでも
もともとサラシュ王国とこのリンデン共和国は同じ一つの国だったんだけど
魔法の扱いについての考え方が違って、分裂したの
……そんなことで
サラシュ王国は、魔法を使える人間がトップに立ち、魔力によって階級が生じている
そんな差別を良しとしなかった人間は、このリンデン共和国に移住した
……へえ
で、何故戦争に?
お互いのトップが「自分の国は正しい」と言って譲らなくて……
資源や、使える土地を制限し合ったりして、それが段々ヒートアップしたの
まるで小学生の喧嘩ですね
うん……
私は、魔法を使える人間だけど、別に偉くなりたいとは思わないな……私の力が周りの人の役に立てばいいなあとか、それくらいだもん
シュウヤのいた世界では、戦争はあった?
ありましたよ
まあ、僕が生まれた時代と、住んでいた国ではありませんでしたけど
平和な場所で育ったのね
そうとは限りません。戦争みたいな大がかりな戦いこそありませんが、毎日のように人が自殺するような国でしたから
はあ……
な、なにそれ……怖い
ほんと、平和な世界だったっていうのに何をしているんだかって感じですよね
そうね……
ところで、もうお腹が空きすぎて腹の虫さえ鳴かないんですけど
はいはい、ハムとバターのスープとパンを用意するから、待ってて
わーい
……状況は掴めた……けど
魔法で国を治める国に、おそらく魔法を治安維持や商売のためにしか使わない国が勝てるのか……?
勝てないからこそ……先制攻撃に出た……とか
だったら、この国のトップはきっと馬鹿だ
嘘で勝てるほど、世間は甘くない
僕は身をもって体験しているんだからよく分かる
はぁ……
ほんと、大変なことに巻き込まれた
僕ができることはただ一つ
なんとかして、危険を回避する
そのためには、嘘でも詭弁でも使ってやろう
面倒、なんだけどね
つづく