シュウヤ

…………

シュウヤ

朝か

長い夢を見ているような感じもするけど、これだけ何回も朝を迎えているとなると、現実なんだろうな

夢だったとしても、面白ければなんでもいいんだけど

シュウヤ

なんか面倒くさいことになってきているような気がする

シュウヤ

戦争ねえ……生憎戦争には縁のない時代と国で生きてきたし……

シュウヤ

そもそも魔法を使った戦争なんてファンタジーなもの、どんな規模になるのか見当もつかない

シュウヤ

僕は可愛い女の子の作るご飯を食べて、だらだらと過ごす第二の人生を送りたかった

シュウヤ

それなのに……

ミロク

zZZ

シュウヤ

なんでこんな人に呼び出されてしまったのか

シュウヤ

顔は悪くないし、頭も悪くはないんだろうけど、どこか残念というか……

シュウヤ

料理はまあ、おいしいけど……

シュウヤ

ああ、お腹空いた。そろそろ起こすか

シュウヤ

お姉さん、起きてください

ミロク

んん……

ミロク

って、まだ朝の六時前じゃない!

シュウヤ

目が覚めてしまったんだから仕方がないでしょう

ミロク

ほんと、いっつも早起きね……

シュウヤ

夜寝る時間が遅すぎるんです。僕は夜の二時くらいに寝るのが習慣でしたから

ミロク

二時!? そんな時間まで何していたの?

シュウヤ

さあ……なんでしょうねえ

シュウヤ

こっちの世界にはネットがない……これはみんな早寝になるわけだ

シュウヤ

そういや、大統領からの続報とやらは出ました?

ミロク

ああ……そのうち回覧板で回ってくるはずよ

シュウヤ

なるほど

シュウヤ

回覧板って……

ミロク

さてと、朝ごはんは何にしようかな

シュウヤ

卵焼きで

ミロク

ああ、今卵きらしてるのよ

シュウヤ

シュウヤ

ダメ人間ですか?

ミロク

卵をきらしたくらいでそこまで言われる筋合いはない!

シュウヤ

まったく、お姉さんは詰めが甘いんですから

ミロク

ほんと……シュウヤは生意気というかなんというか……

ミロク

あ、回覧板かな

シュウヤ

早くないですか

ミロク

正規ルートの回覧板じゃないからね

シュウヤ

え?

ローザ

おっはー! ミロクっちいるー?

ミロク

おはよう、ローザ。回覧板?

ローザ

そーだよー

ローザ

絶対漏らしちゃだめな情報だからねー

ミロク

了解

ミロク

あれ? 何か挟まってる

ローザ

あっ

ローザ

これはだめー!

ミロク

え?

ローザ

あぶなかったー……これはミロクっちにも見せられない“ひみつじょうほう”だから、みちゃだーめー

ミロク

そう……

ローザ

じゃ、それは見終わったら次の人に回してねー

ミロク

はーい

シュウヤ

…………

シュウヤ

なんですか? 今の頭のねじが数本足りない女の人は

ミロク

ああ……うちの学校の新聞部部長のローザよ

ミロク

あんなんだけど、いつも誰も知らないような最新情報を掴んできてくれるの

ミロク

まあ、情報を集めているのは彼女じゃないって噂もあるけどね

シュウヤ

ほう……?

ミロク

ま、そんなことはいいの……ええっと……サラシュ王国との戦争が正式に決定し、うちの学園長が今日の昼間にでも生徒全員を招集する……って

シュウヤ

それはそれは……大変ですねえ

ミロク

他人事……

シュウヤ

そういえば、そもそもなんで対立してるんです?

ミロク

んー……方向性の違いというか……

シュウヤ

……バンドか

ミロク

バンド?

シュウヤ

いえ、なんでも

ミロク

もともとサラシュ王国とこのリンデン共和国は同じ一つの国だったんだけど

ミロク

魔法の扱いについての考え方が違って、分裂したの

シュウヤ

……そんなことで

ミロク

サラシュ王国は、魔法を使える人間がトップに立ち、魔力によって階級が生じている

ミロク

そんな差別を良しとしなかった人間は、このリンデン共和国に移住した

シュウヤ

……へえ

シュウヤ

で、何故戦争に?

ミロク

お互いのトップが「自分の国は正しい」と言って譲らなくて……

ミロク

資源や、使える土地を制限し合ったりして、それが段々ヒートアップしたの

シュウヤ

まるで小学生の喧嘩ですね

ミロク

うん……

ミロク

私は、魔法を使える人間だけど、別に偉くなりたいとは思わないな……私の力が周りの人の役に立てばいいなあとか、それくらいだもん

ミロク

シュウヤのいた世界では、戦争はあった?

シュウヤ

ありましたよ

シュウヤ

まあ、僕が生まれた時代と、住んでいた国ではありませんでしたけど

ミロク

平和な場所で育ったのね

シュウヤ

そうとは限りません。戦争みたいな大がかりな戦いこそありませんが、毎日のように人が自殺するような国でしたから

シュウヤ

はあ……

ミロク

な、なにそれ……怖い

シュウヤ

ほんと、平和な世界だったっていうのに何をしているんだかって感じですよね

ミロク

そうね……

シュウヤ

ところで、もうお腹が空きすぎて腹の虫さえ鳴かないんですけど

ミロク

はいはい、ハムとバターのスープとパンを用意するから、待ってて

シュウヤ

わーい

シュウヤ

……状況は掴めた……けど

シュウヤ

魔法で国を治める国に、おそらく魔法を治安維持や商売のためにしか使わない国が勝てるのか……?

シュウヤ

勝てないからこそ……先制攻撃に出た……とか

シュウヤ

だったら、この国のトップはきっと馬鹿だ

シュウヤ

嘘で勝てるほど、世間は甘くない

僕は身をもって体験しているんだからよく分かる

シュウヤ

はぁ……

ほんと、大変なことに巻き込まれた

僕ができることはただ一つ

シュウヤ

なんとかして、危険を回避する

そのためには、嘘でも詭弁でも使ってやろう

面倒、なんだけどね

つづく

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