さて、このお姉さんにいろいろ吹き込んで、どこまで動いてもらえるかな
ああ、学校休みなんですか
そりゃまあ、校舎が一部破壊されちゃったからねえ
じゃあ、おねーさんは今日はどうするんです?
学園長からの指示を待つわ。本当に生徒が戦争に駆り出される……なんてことになったら大変だし
まあ、いいじゃないですか。おねーさんは魔法、得意なんでしょ?
そうでもないのよ……なにせ私の得意魔法は『祈り』だし
『祈り』なら余計に遠方から攻撃できる手法がたくさんあるんじゃないですか?
例えば……?
いや、僕は魔法について詳しくないんでそんなよく分かりませんけど
聞いた話によりますと、透視や転送はお手のものなんでしょう?
なら透視で敵の位置を把握して爆弾でも転送すれば一発ですよ
もしくは、強い魔力のある人間を敵陣に転送させ、攻撃させてからこちらへ戻すとか……応用ならいくらでもきくはずです
な、なるほど……
そんなことも考えなかったんですか?
今まで、自分の魔法は戦闘向きじゃないって思ってたから……考えたことなかったかも
…………
あの、失礼なことを問いますが
何?
お姉さんって、本当は馬鹿なんじゃないですか?
し、失礼な!
1+1は?
馬鹿にしないでよね!
12の二乗は?
急に難易度上げないで!
…………
やっぱり馬鹿だ
じゅ、12の二乗は144でしょ?
ちゃんと計算すればそれくらい分かるし……
わー、流石ミロクおねーさん、天才です
また、馬鹿にして……
ま、そんなわけで
『祈り』の魔法でも十分戦闘能力はありますし
校舎の一部を破壊することも可能です
それって……
わ、私を疑っているの!?
いえ、全然
え?
だって爆発があったとき、あの変な呪文みたいなやつ唱えてなかったじゃないですか
変な呪文みたいなやつって……確かにあれは魔法を発動するための呪文だけど
この世界の魔法が面倒くさいところは、そこですよね。発動に時間がかかるというか……
一応、短縮することも可能よ
そうなんですか?
簡単な魔法に限るけどね……魔法陣を描くだけで発動させられる魔法もあるにはある
へー
そんな、わざわざ自分が容疑者になりかねない情報をどうもありがとうございます
そりゃあ……私は犯人じゃないから
言っても問題はないかと……
へー……まあ、どうでもいいんですけど
どうでもいいって……
いずれにせよ、お姉さんは白ですね
黒だったら、僕とこんなところで駄弁ってないで、誰かと連絡を取る必要もあるでしょうし
今回の件、どうも単独犯の計画とは思いにくいところがあるので
どうして?
僕だったら、一人でこんなことはしないなあと思ったからです
そんなのが根拠になるとは思えないんだけど
おねーさんは、僕に疑ってほしいんですねー
そうじゃないけど!
ふう……
そうだ、ここで一つ昔の話をしましょうか
昔の話?
僕がまだ前の世界にいた頃の話です
なんで、突然
なんか、あまりにも今の状況と似ていたので
参考までに
参考……
そもそも僕が死んだのは、ある女の子を庇ったために事故に遭った……っていう、まるでヒーローのような素晴らしい経緯なんですが
初っ端から嘘っぽい……
これは事実です
そうじゃなかったら自殺してたけど
ん?
いえ、なんでも
さて、このお姉さんにいろいろ吹き込んで、どこまで動いてもらえるかな
その話僕にも教えてほしいな
ん?
だ、誰!?
ふふふ。不法侵入してごめんね
僕はキノ
所謂、情報屋ってやつかな
情報屋って……
まーた、ややこしいのが出てきた
続く