訓練場の裏ルール。
『場長への挑戦はいつでもいい』
無論、タラトはそんなルールなんて知らなかった。強いモノと戦いたい。それだけの願望でここにいる。初めて食堂で暴れた時に、一方的にボコボコにされた事が脳裏に焼き付いているのだ。
訓練場の裏ルール。
『場長への挑戦はいつでもいい』
無論、タラトはそんなルールなんて知らなかった。強いモノと戦いたい。それだけの願望でここにいる。初めて食堂で暴れた時に、一方的にボコボコにされた事が脳裏に焼き付いているのだ。
タラトは一直線に前進した勢いをそのままに拳を奮う。速く力の乗ったその拳は、手加減などしていないことがわかる。
相変ぁらずおっそろしい
パンチじゃのう。
って! おおっ!
場長がいつもの軽口を叩くが、タラトはお構いなしに次の攻撃を仕掛けてくる。
タラトの攻撃は、正伝剣術にある格闘術とは程遠い荒っぽい攻撃だ。誰に教わったわけでもない野性的な格闘。正伝剣術のような纏め上げられた戦闘体系から見れば、獣のそれと変わらない。
がぁっ!!
連撃で場長を追い込むタラトが放ったのは、爪を立てるような素早い攻撃だ。
見ている者にも伝わる衝撃音。それと共に吹っ飛んだのは、タラトだった。
邪魔をするな、野人が。
タラトを吹っ飛ばしたのは、シャセツの横蹴り。場長への挑戦を邪魔されて、苛立っているようだ。
野次馬達が盛り上がってきたと騒ぎ始める。ハル達は最前列に行くことすら出来ず、人だかりに揉まれている。
ヌグ、ゥ~
腹部に手を当て痛みを堪えるタラトはゆっくりと立ち上がる。人間一人が吹っ飛ぶほどの蹴りを受けて無事なわけがない。しかもタラトが押さえている箇所は、急所の一つだ。
しかし、タラトは笑った。
それは場長を見付けた時と同じで、子供が新しい遊びを発見したような笑みだった。
腹部に伝わる痛覚が、シャセツを強者と認めさせたのだろう。
ジジイとは俺が先約だ。
腹押さえてジッとしてろ。
横を素通りしようとするシャセツを襲ったのは、タラトの振り向きざまの裏拳。荒っぽく振り回されたその拳からは、、ゾッとするような暴の力を感じる。
が、シャセツはそれを搔い潜り、タラトの懐に踏み込んでいた。最初に蹴り込んだのと同じ場所に平拳を打ち込む。
歪むタラトの顔。そしてシャセツの照準は、少し屈んだ顎を捉えていた。
間髪入れずに隙だらけの顎を掌底で突き上げる。
大きく跳ね上がるタラトの頭。おそらくは大きく脳を揺さぶられているに違いない。
しかし直ぐに持ち直そうとするタラトは、シャセツに照準を合わせようとする。
だがタラトの視界に入ってきたのは、流れるような動作で繰り出されたシャセツの後ろ回し蹴りだった。
側頭部に衝撃が走った後、タラトの視界は横方向に回転する。
寝てろ。
俺は嫌いなんでな。
力任せに暴れるだけの奴が。
シャセツの言葉は、二人の性質を一言に表していた。野生の勘と膂力で動くタラトに対し、合理性を重視した技を追及するシャセツ。
シャセツはタラトをちらりと見下し、場長に向き直る。場長は実に楽しそうに二人のことを見ていた。
追い打ちはええんかいのぉ。
弱者をいたぶる趣味はない。
ワシはそう思わんがの?
殺し合いか?
そこまで言うとらんて。
ほんで勘違いしとるよ。
色々とのぉ。
ゴチャゴチャと
余計な話を……
悪寒がシャセツの背中を駆け上がった。
タラトを視界に入れる動作は、回避に近いものだった。タラトは既に立ち上がっている。ダメージがないわけではないが、まだ戦闘不能とは言い難い。
場長が口に洩らした勘違い。それは、シャセツの悪寒が充分に物語っていた。この野人が只者ではないことを。
山の端さん、毎度ありがとうございます。
主人公が草食系なので、戦闘民族チックなこの2人に暴れてもらいましょう。てな感じですね。
片言であまり喋らないので分かりにくいですが、タラト視点ののお話もいつかしたいものです。
更新お疲れ様です…!!
アクションが入ると
身が締まります…( ˙-˙ )笑
シャセツくんがいい感じにツンツンしてて好きです…
トットさん\(´ω` )サンキューでーす。
なかなか心許さない感じですね。バリアが厚いシャセツに、ドンドン暴れてもらいましょ。マギアフィラフトは仲良しさんが殆どですが、彼のような存在は貴重です。
お久しぶりです。
戦闘シーン、迫力があって、二人ともとてもカッコ良かったです。文章と絵が切り替わるタイミングがぴったりで一気に読んでしまいました。