俺、大野信一(おおのしんいち)17歳の誕生日の朝がやって来た。














幸せ一杯、夢一杯の今日この日!!














俺は今、太陽の光に導かれ、目を開く!!

羽島桜

……

早川実

……

大野信一

……?

あっれぇ~。おっかしいぞ~。





何がどうなって、俺の部屋に女の子二人がいるんだ~?





夢か? これは夢なのか?





そうか。流石は誕生日。





夢でまで俺の事をお祝いしてくれると言うのだな。





いやー、なるほどなるほど。





ありがとよー。人選ミスではあるが嬉しいよー。





再度、俺はまぶたをゆっくりと開いた。

羽島桜

……

早川実

……

大野信一

……ねぇ

羽島桜

はい?

早川実

なによ?

大野信一

君達、朝からなにやってるん!?

目を覚ましてすぐに視界に入った人物が、妹の美智留(みちる)ならまだいいんだ。





むしろ、そんな展開を望んでいたまである。

大野美智留

にいさーん、おはよっピー! 朝から元気っき~!

大野信一

俺も朝から元気っきー!

大野美智留

元気っき~!

大野信一

元気っきー!

…でも違うんだ!! 





ただいま現実。お帰り俺。





俺の視界に入る人物。
幼馴染の早川実(はやかわみのり)と転校生の羽島桜(はしまさくら)が一体なぜ朝から俺の部屋に?





意味わかんねーよ!

早川実

ごちゃごちゃ言ってないで、早く起きてよ信一! 学校遅刻するよ?

羽島桜

そうですよ、信一くん。この状況なんてささいな事です。そんな事より、早く仕度しちゃって下さいね

大野信一

おいこら、誤魔化すなーーーーーーー!!

とは言うものの、時計を見ると本当に遅刻が危うい時間だというのも本当だった。





俺は急いで二人を廊下に出して部屋着から制服に着替えた。





……その間、廊下からは以下の様な会話が俺の耳に丸聞こえだった事をここに記そう。

羽島桜

きゃあああああ、信一くんの寝顔見ちゃいました!!

早川実

私なんて、小さいときの寝顔も見た事あるもん!!

羽島桜

その割には、ケータイでパシャパシャ写真を撮り過ぎですよ

早川実

べ、別にいいでしょ。桜だって沢山撮ってたじゃない!

羽島桜

わ、私は初めてです!!

早川実

…えへへへ

羽島桜

…あははは

人の寝顔撮ってる暇があるなら起こそうぜ!!!!

はぁ…自分史上最速で着替えた。人間って、こんなに早く着替えられるんですねー。

大野信一

おはよう美智留! 兄ちゃん、朝からこんなサプライズがあるなんて聞いてないよー

大野美智留

あ、兄さん誕生日おめでとう。朝から実ちゃんと桜さんが来てたから、中に上がって待っててもらったんだけど…

大野美智留

…ダメだった?

大野信一

全然おっけー!

大野美智留

そう! よかった~

可愛すぎるだろチキショー!!

守りたいこの笑顔!! 





俺は絶対に妹を怒る事が未来永劫できないでしょう!!

大野美智留

朝ご飯食べてく? 時間結構やばいけど…?

大野信一

ごめん、本当にごめん…俺がお前の作ってくれたご飯が食べられない時が来るなんて…

大野美智留

大丈夫だよ、兄さん。これは私のお昼に回すだけだから。それにほら、後ろで二人が待ってるよ?

早川実

……

羽島桜

……

兄妹水入らずの所に、部外者から鋭い視線を感じるぞ…?

俺今日誕生日なのにー!

大野信一

わかった。行ってきます

大野美智留

行ってらっしゃい

羽島桜

お邪魔しました~

早川実

お邪魔しましたー

マジで邪魔だったわ!!!!

朝からとんでもない事が起きた誕生日だが、学校ではもう少しましであって欲しいと願った。

そしたら、ホームルームでとんでもない奇跡が起こる!!

美濃麻実

えっと‥連絡は以上。あ、あと、大野の誕生日だそうだぞ。おめでとう大野!

大野信一

ひゃっほー! 麻美たんに祝ってもらった!!

委員長寿

ほう、そうか。今日はお前の誕生日か。クラス委員として、俺からも言わせてもらおうか

そう言って、クラス委員長の委員長寿(いいんちょうじ)くんは俺の側までやってきた。

委員長寿

調子に乗るなよ?

委員長寿

おめでとう、大野

先生、俺今委員長に脅されてるんですけど!!

助けてください!!

午前中の授業を終え、お腹が鳴りだす昼休み。

伊村延彦

信一、誕生日おめでとう。俺からのプレゼントな

伊村延彦(いいむらのぶひこ)からは、レジ袋に入った漫画をもらった。




あれ…この漫画知らないぞ。

伊村延彦

この漫画、俺のおすすめな!

大野信一

ほえ~、ありがとう延彦

伊村延彦

…誕生日は倍で返せよ?

大野信一

口から本音が漏れなけりゃ100点に近い誕プレだったのにな!!

こいつは締めがいつも甘い。





まあ、いつもお世話になってるし、倍にして返してやらんことも…あれ、お世話になってたっけ?

花形海松良

信一、僕からも信一にプレゼントを持って来たんだけど…受け取ってもらえるかな?

今度は、花方海松良(はながたみるよ)くんが俺にプレゼントを持ってきてくれた。





大きな箱が小さな腕に運ばれているではないか。

大野信一

もちろんさ。それより、それは…?

花形海松良

これはキャラメルの詰め合わせだよ!

花形海松良

嫌いかな?

大野信一

ありがとう、俺はすっごい嬉しいよ!

花方くんからのプレゼントなら全部。

花形海松良

よかった~。喜んでもらえてなによりだよ

俺は花形くんからのプレゼントを幸せな気持ちで受けと‥‥重い!!

大野信一

は、花方くん!? これはどうやって持って来たのかな~!?

花形海松良

普通に、うんせっ、うんせって運んできたよ

か、可愛すぎるんですけど!!!

なに、その仕草。男だよね。うん、男だ。





花方くんのその細い腕には、俺なんかが想像できない筋肉が詰まっているのかもしれない。





間違いない。





花方くんの謎を、また一つ知ってしまった。





それ以上に可愛いから何でもオッケー!!

昼休みが終わり、午後の授業はどうしても眠くなるものだ。





なにせ今日は誕生日。





こんなに大変な日はよけいにだ。





意識が遠ざかる事に抵抗を一切せず、俺はそのまま深いねむりへとついた…。

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