俺、伊村延彦の住んでる世界はどこまでも波瀾万丈だと思っていた。
親が毎日の様に喧嘩をする家庭にいて、期待を裏切らずに案の定両親は離婚した。
いいんだ。これは俺の運命だから。
中三に上がる前、俺は母親と共に今まで住んでいた土地を出た。
これもしょうがない。親父より母親を選んだのは俺だ。
転校したのが中学三年生。俺はクラスで完全に孤立した。
こんな時期に転校する俺が悪いんだ。誰も責められないさ。
家に帰ると、母親はいつも仕事でいない。
帰ってくるのは、俺が寝付いたあとだ。
だが、毎晩そんな母親の泣き声が俺の耳に届く。
朝、俺が目を覚ますと母親は既に仕事に出かけていなくなる。
俺は、いつでもどこでも孤独なんだ…。
こんな真っ暗な人生。俺はいつしか光なんて見えなくなっていた。
この世に光なんてない。
少なくても、俺の所には。
なら、こんな世界から剥がれた方が楽なのでは…。
ある日、俺は屋上に向かった。
空は青いはずだ。風も気持ちいいはず。
だけど…、全てが黒い。こんな人生は望んでいなかった。
孤独が嫌だ。一人は嫌なんだ。
嗚呼、どうか来世では不運とは縁のない世界を…。
俺は世界との接点を立つべく、フェンスを上って…。