シュウヤ

……つまり

シュウヤ

僕たちが今いるリンデン共和国は、隣のサラシュ王国と対立関係にあって、

シュウヤ

武力抗争になった時に真っ先に戦力になる魔法使いを先に潰そうとしてきた……と

シュウヤ

それがあの偉そうな生徒会長さんの意見なんですね

ミロク

まあ、今この国がサラシュ王国と対立関係にあることも、もしかしたら武力抗争になるかもしれないことも確かだから……

ミロク

筋は、通っていると思う

シュウヤ

その言い方だと、ミロクお姉さんには何か不満があるようですね

ミロク

不満っていうか……何か引っかかるというか……

シュウヤ

ほう

ミロク

本当に魔法学校を潰したいならば、こんな時間に攻撃はしない

ミロク

それなら、こんな中途半端な攻撃をしかけたのには、何か意味があるんじゃないかって思って

シュウヤ

威嚇のつもりだとか

ミロク

威嚇……そんな面倒なことするのかしら

シュウヤ

面倒ですか?

ミロク

わざわざ敵国に赴いて、潜伏して、それで破壊するのは校舎の一部だけ……そんなのあまりに非効率で面倒でしょ?

シュウヤ

確かに

シュウヤ

因みに、この国には他に魔法学校があるんですか?

ミロク

ここと、もう一つしかない。ただまあ、魔術偏差値が高いのはうちの学校の方

シュウヤ

魔術に偏差値とかあるんだ……

ミロク

そりゃまあ……生徒にとっての魔術は学問の一つみたいなものだしね

シュウヤ

大変ですねー

ミロク

棒読み……

シュウヤ

話を戻しますけど、もし攻撃したのが敵国じゃないとしたら……一体誰が校舎を破壊したんでしょう

ミロク

さあ……

ミロク

魔法が使える人間だというのは確かだと思うけど

シュウヤ

ぶっちゃけ一番怪しいのはこの学校の生徒ですよね

シュウヤ

こそこそ侵入する必要とかありませんし

シュウヤ

ま、僕は部外者だけど堂々と侵入しているんですけどね

ミロク

うーん

ミロク

この学校の生徒がやったにしても……動機が……

シュウヤ

そりゃまあ、学校が嫌だったとか

ミロク

そんな理由でそんなことするわけないでしょ

シュウヤ

僕だったら……

シュウヤ

したいと思いますけどね

ミロク

…………

ミロク

シュウヤ、あなたは……一体何があったの?

シュウヤ

……何、とは?

ミロク

まるで何か……転生前の世界に嫌な思い出があるようで……

ミロク

時折、表情が暗くなるから

シュウヤ

別に何も……僕は元からこんな顔です

シュウヤ

しいていうなら、裏切られた……それくらいです

ミロク

裏切られた……?

シュウヤ

いやー、僕見かけによらず優秀な人間なんで、周囲から敵対視されてしまったんですよねー……いやあ、優秀な人間は辛い

ミロク

また適当なことを……

シュウヤ

…………

シュウヤ

お姉さんは、そういうことないんですか?

ミロク

私?

シュウヤ

お姉さんは、自分がモテないのはおかしいって公衆の面前で叫ぶことができるほど優秀な人なんですよね?

ミロク

優秀っていうか……

ミロク

確かに魔法と学業は優秀だけど、顔面偏差値とかそれ以外は所詮平均以上くらいだと思っている

ミロク

でも、妙に高すぎるよりも、そこそこ低い面があった方が優良物件なんだと思って

シュウヤ

謙遜していそうだけどさらっと「平均以上」とか言ってるよこの人……

ミロク

何か言った!?

シュウヤ

いえ、何でも。

シュウヤ

じゃあ、そんな優良物件なミロクお姉さんは、誰かにひがまれたこととかないんですか?

ミロク

ひがまれたことか……

ミロク

特に、ないかな

シュウヤ

それはとても恵まれていますね

ミロク

まあ、私のことを羨ましいと思っている子は少なからずいるとは思うんだけど

シュウヤ

お姉さん、知っていますか?

シュウヤ

そういうのを、自意識過剰って言うんです

シュウヤ

やめたほうがいいですよ、そういうの

ミロク

う、うるさい!

地味にいい笑顔で言うな……

シュウヤ

「うるさい」は、会話を放棄する定型文ですよ

ミロク

…………っ

ミロク

じゃあどうすればいいのよ

シュウヤ

さあ

ミロク

さあ……って

シュウヤ

あ、話はまた戻りますけど

シュウヤ

今回、事件の被害者は一人もいなかったんですよね

ミロク

うん……まあ、始業時間前だったからかな

シュウヤ

いやでも、始業時間前でも教室に来る生徒くらいいるでしょう

シュウヤ

現に、ミロクお姉さんは僕がいなければそのまま教室へ行ってませんでした?

ミロク

確かに……

ミロク

リリコたちも、魔法の練習始めなければ教室へ向かっていただろうし

ミロク

なんだろう……犯人は偶然人が教室にいない時間を狙ったとか……

シュウヤ

そんな都合のいい偶然なんてありますかね

ミロク

それなら……一体……

シュウヤ

犯人が、生徒皆が外に出るように誘導したとか

ミロク

そんなこと簡単にできるわけがないでしょ

ミロク

リリコたちが外に出たのだって……ライトが発破をかけたからで……

ミロク

あれ……

やっぱり、何かが引っかかる

シュウヤ

参考までに聞きますけど、あの生徒会長さんの得意魔法って何なんです?

ミロク

……確か「風」だけど

シュウヤ

じゃあ、風圧で壁を壊すことも可能ですね

ミロク

まさか、ライトを疑っているの?

シュウヤ

いえ、別に。ただ一つの可能性を考えたかっただけです

シュウヤ

あの生徒会長さんが言葉巧みに生徒たちを教室の外に出させ、そしてあの校舎を破壊した……とか

ミロク

その話は筋を通すことができるかもしれないけど

ミロク

動機がない

ミロク

彼は、この学校の生徒会長だよ?
この学校に何かあったら生徒代表として責任を負う立場だもん……破壊するメリットがない

シュウヤ

案外、自分の立場が気に食わないだとか、そんなちっぽけな理由もありますよ

シュウヤ

動機なんて、本人にしか分からないんですから、想像するだけ労力の無駄です

ミロク

そうね……

シュウヤ

それに僕は、まだ可能性を提示しただけですし

シュウヤ

それに、気になる人物はもう一人いますし

ミロク

え……?

シュウヤ

あ、お姉さん。僕はそろそろお腹が空きました

ミロク

え……?

シュウヤ

続きは夕食の後にでもしましょうか

ミロク

誰が夕食作ると思っているの……

シュウヤ

ごちそうになりまーす

ミロク

今、絶対感情こもってなかったでしょ?

シュウヤ

いえいえ、感謝してますよー

ミロク

それなら目くらい合わせなさい……

ミロク

にしても……

普段の私だったら、ライトのあの話に納得して、何も考えなかったのに。

こいつのせいで、妙に真相について考えてしまう

ミロク

どうしたものか……

さて……この時私はまだ知らなかった。
まさか自分が、とんでもない事件に巻き込まれるなんて

つづく

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