ミロク

……何だろう、今の音

シュウヤ

外の方から聞こえましたね

シュウヤ

行ってみましょう

ミロク

えー

シュウヤ

乗り気じゃないですね

ミロク

面倒事には首を突っ込みたくないの

シュウヤ

まったく……

シュウヤ

そんなんだから、モテないんですよ

ミロク

な……っ

シュウヤ

こういう変なイベントには積極的に首を突っ込まないと

シュウヤ

出会いは生まれません

ミロク

そんな理論聞いたことないんだけど

シュウヤ

そうですか……

シュウヤ

まあ、僕が今適当に考えたから当然ですね

ミロク

ちょっと……っ

シュウヤ

でも、結構的を射ていると思うんですけど

シュウヤ

さ、行きましょう

ミロク

ねえそれって……本当は自分が行きたいだけなんじゃ……

シュウヤ

ギクリ

ミロク

今、またギクリって!

シュウヤ

お姉さんが行かないなら、僕が勝手に行きますけど

シュウヤ

いいんですか?

シュウヤ

僕、何か面倒事に巻き込まれたら真っ先にお姉さんの名前を出しますよ

ミロク

何でそんな風評被害になりそうなことを……

シュウヤ

僕、この世界に身寄りはありませんし

ミロク

…………

ミロク

分かった、行けばいいのよね、行けば

シュウヤ

流石お姉さん

シュウヤ

ノリがいい

ミロク

まったく……

シュウヤ

何度見ても学校には見えないお城のような建物だ……

ミロク

まあ、魔法学校は特殊だからね

シュウヤ

ふうん……

ミロク

そういえば……魔法がない世界から来たってことは……魔法についてちっとも知らないのよね

シュウヤ

そうですね

シュウヤ

魔法について学んだら僕も魔法を使えるようになるんですか?

ミロク

魔法は……元から魔力を持って生まれた人間にしか使えないの

ミロク

あなたに魔力があるかどうかで、あなたが魔法を使えるかどうかも変わってくる

シュウヤ

じゃあ、無理な気がしますね

ミロク

分からないわよ。転生時に魔力を与えられた可能性もある

シュウヤ

……そんなことありますかねえ

リリコ

…………

レミ

…………

ルイン

…………

ミロク

みんな、一体何が……

シュウヤを連れて外に出てみると、リリコと、リリコの魔法練習に付き合おうとしていたレミとルインが立っていた

その目線の先には……

ミロク

校舎が……崩れている……?

一部が壊れてしまった校舎の西棟があって……

ミロク

まさか、リリコが魔法に失敗して……

リリコ

ち、違うよ~!!

リリコ

練習していたら、突然爆発音がして……見に行ったら、こんなことに……

レミ

私も目撃者だから証言できる。これは、リリコの魔法とは一切関係ない

ルイン

リリコの得意魔法は炎……でも、この校舎からは火の手は上がってない

ミロク

なるほど……

それじゃあ、何が起きたっていうの……?

シュウヤ

少なくとも人為的なものですね、きっと

ルイン

ん……君は?

シュウヤ

ミロクお姉さんの親戚です

シュウヤ

魔法学校が気になって、来ちゃいました

ルイン

へえ……でも、今日は平日じゃ……君、学校は?

シュウヤ

創立記念日です

ミロク

また、さらっと嘘を……

ルイン

それで、人為的なものだと根拠づけられるのは?

シュウヤ

ああ……だって、校舎の老朽化とかで自然に壊れたのだとしたら……普通瓦礫は下に溜まるでしょう?

シュウヤ

でも……校舎の破片や瓦礫は……四方に散らばっている……

シュウヤ

こんな派手な散らばり方……自然崩壊ではあり得ませんよ、流石に

確かに……壁の破片が遠く離れたここまで飛んできている

それに、この建物は比較的新しい……老朽化なんてものはなさそうだし

ミロク

じゃあ、一体誰が……

シュウヤ

誰かが、学校を休みたくて校舎を破壊したとか

ミロク

そんな理由で……

シュウヤ

僕にもし魔法を使う力があったらやりかねませんけどね

レミ

ははは、シュウヤくんは面白いことを言うね

リリコ

私も学校が嫌になることはあるけど……でも、犯罪に手を染める度胸はないなあ

シュウヤ

ふむ……そうですねえ、ばれたら一発退学どころか逮捕ですか

ミロク

そうねえ……

レミ

ていうかあそこ……私とリリコのクラスがある場所じゃ……

リリコ

ほんとだ……じゃあ、魔法の練習しようとしないでそのまま教室に行ってたら……

レミ

下敷きに……?

リリコ

てか、他のクラスメイトたちは……!?

レミ

まさか……

レミ

ミロク……透視、してくれない?

ミロク

分かった

シュウヤ

…………?

ミロク

アンファング……

ミロク

メーディウム・メーディウム・メーディウム

ミロク

ゼーエン・ヒンテ・テューア

ミロク

エンデ!

ミロク

…………

レミ

どうだった……?

ミロク

人の気配は……ない

レミ

ない……?

リリコ

もうすぐ、授業が始まる時間なのに……?

ミロク

うん……

シュウヤ

…………

シュウヤ

今のが、ミロクお姉さんの魔法ですか?

ミロク

うん……これは、透視の魔法

ミロク

私の得意魔法は『祈り』
人間の五感の延長線となる力を使ったり、物を修復したり、遠くのものを呼び出したり、転送したりもできるの

シュウヤ

ああ……なるほど

シュウヤ

それで、僕を

ミロク

静かに

ライト

レミ……!

レミ

ライト……!

ライト

無事だったんだね

レミ

うん、リリコの練習に付き合っていたから

ライト

それは……よかった

ライト

ポンコツ魔法が人命を救ったということか

リリコ

酷い……っ

ライト

冗談だよ

ライト

他の生徒たちも偶然教室の外にいたらしくてね

ライト

被害は校舎だけで済んだんだ

レミ

なんという偶然

シュウヤ

偶然……ねえ

ライト

……君は?

シュウヤ

ああ、ミロクお姉さんの親戚のシュウヤといいます。今日は学校が創立記念日で、それでお姉さんの学校を見学に

ミロク

また、流暢に嘘を言う……

ライト

……そう

ライト

でも、部外者は今日は帰った方がいいかもしれないよ

シュウヤ

どうしてですか?

ライト

これは……僕たちの学校を狙ったテロかもしれないから

ルイン

テロ……?

ライト

そう……隣国と軍事争いが勃発しそうな今、他国がこの国の魔法学校を潰そうとしている可能性は大いにあり得る

ライト

だから……気をつけたまえ

ミロク

物騒ね……

シュウヤ

お姉さん

ミロク

何?

シュウヤ

その話、あとでじっくり教えてください

ミロク

……どうして?

シュウヤ

なんか……ひっかかるので

ミロク

……まあ、いいけど

この日は、授業を行うのは不可能だと判断され、休校になった。

復旧作業には暫くかかりそうだ。

それにしても……一体、何が起きているのか。

シュウヤが引っかかっていることは一体何なのか……

私には、いまいち分からない。

ミロク

でも……なんか、もやもやするなあ

つづく

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