Wild Worldシリーズ

セアト暦28年
英雄の夢

3

  

  

  

レダ

ミランダ、どうしたの?

 彼女のただならない様子に、レダは立ち上がるとミランダに駆け寄った。

 ラムダもついていく。

 ミランダは初めて会うラムダに一瞬目を向けて、だけど挨拶なんかしている場合ではないと、心配そうな2人に見守られながら、呼吸を整えてから言った。

ミランダ

クーがね、崖から落ちそうなの!!

 今にも泣きそうなミランダ。

レダは驚いて、彼女の肩に手を置いた。

レダ

どういうことなんだ? クーは?

ミランダ

外れの公園で、私がちょっと目を離した好きに落ちそうになってて……
助けようと思ったんだけど、私の力じゃ無理なの
だからレダをずっと探していて……

レダ

外れの公園だね。分かった

話を最後まで聞かず、レダは頷くと駆け出した。

ミランダ

レダッ!!

 ミランダも、苦しそうな顔で追いかけていく。

 心配と好奇心で、気がつけばラムダも2人の後を追っていた。



















    

ラムダ

この街にこんなところがあったんだ

 初めて見る景色に、ラムダは素直に驚いた。

リバーストーンの郊外、入り口から扇状に広がっている公園だった。

人の気はなく、むき出しの土に大きなアスレチックが一つだけある。

そのアスレチックに上から下げてある丈夫そうなロープは、潮風に晒され続けたせいかつなぎ目で切れ掛かっていて、大きな丸太は所々剥げて誰かの遊んだ形跡があった。

錆びた釘が木から出ていて、大人はこの公園は子供に遊ばせるには怖いと思うが、子供は遊びたいと思う、そんな公園。

ラムダ

リバーストーンって広いんだね
僕も今度来てみようかな

ミランダ

そんなこと言っている場合じゃないわよっ!!

 ミランダに一喝されて、ラムダはしゅんとなる。

レダは2人には取り合わず、外円の柵があるほうへ走っていった。

柵を越えれば、崖。

下は海で、高さは50メートルといったところだろうか。


落ちたら……どうなるかわからない。

ミランダ

こっちよ!!

 先に行くレダに慌てたミランダは、呼びかけると走り出す。


 ミランダは柵が壊れ、気をつけなければ落ちてしまいそうな場所でしゃがみ込んだ。

レダ

クーっ!!

キャ…ン

 レダの後にラムダは追いついて、ミランダの隣にしゃがみ込み同じように下を覗き込んだ。

 クーという仔犬が1mくらい落ちていて、そこに偶然生えていた木に腕の力だけで捕まっていた。

子犬ということもあってすでに憔悴している。

このままでは危険だ。


 海まで50m。

もし落ちたら、クーのような仔犬では生きていられる可能性は低い。

ラムダ

クーっ!!

 いたたまれなくなって、ラムダもその仔犬の名前を呼んだ。











  

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