向こうの世界ではもう死んでいる……
ふむ……
なかなか、美味しいじゃないですか
そう……よかった……
って、なんでそんな上から目線なのよ!
いえ……なんとなく
まったく……
少なくとも、僕の親の料理よりかは美味しいと思いますよ
親……
そうだ……あなたが帰らなければあなたのご両親が心配するんじゃ……
それは……ないですね
え……何故?
僕、もうあっちの世界では死んでるんで
なっ
転生ってそういうもんでしょう……死んで、生まれ変わるんです
何故か、そのままの年齢のままこっちの世界に来てしまったんですけど
そう……
向こうの世界ではもう死んでいる……
しかも、この年齢で……
何か、聞いてはいけない事情がありそうね
ま、自殺したんですけどね
なっ
……冗談です
自殺できるんなら自殺したかったですけどね
それって……どういうこと?
さぁ……適当に解釈してください
そんなこと言われても……全然分からないんだけど
はぁ……
で、僕はどこで寝ればいいですかね
え……?
勿論、住まわしてくれるんですよね、お姉さん
そんな、突然……
僕を呼び寄せておいて、見捨てるんですか?
それは……
ていうか……なんかあなた、自分の意思でここへ来たみたいだけど
ギクリ
い、今、ギクリって言った!?
まあ、あれです
転生して第二の人生を味わいたいなーと思っていたのは事実ですが
そう思っていた僕の魂を呼び寄せたのは、紛れもなくお姉さんなんですよ
な、なるほど……
私が転生魔法を使わなかったら、彼がここに転生することもなかったわけで……
結局、私の所為か……
で、本題に戻りましょう
僕はどこで眠ればいいですかね
ええっと……私のでよければそこのベッド使って
お姉さんは……馬鹿ですか?
なっ
それなら、お姉さんはどこで寝るっていうんです?
それは……
後先考えない発言は控えてください
はい……
って、どうしてそんな上から目線なの!?
とりあえず、僕はそこのソファーでも使わせてもらうんで
家主はちゃんとベッドで寝てください
案外そこは謙虚なのね
そうです、謙虚です
お姉さんは僕を見習うべきです
それは……まるで私が謙虚じゃないみたいな言い方よね!?
事実です
お友達に「自分は超優良物件だ」とかいう人が謙虚なわけがない
それは……事実だと思っているし
はぁ……
残念な人
うるさい!
まあ、これからお世話になるんで
よろしくおねがいしまーす
何故棒読み……
こうして、私と彼の奇妙な同居生活は幕を開けた
でも、同居するならもっと……彼氏候補のカッコいい男の子のほうが良かったのになあ
年上で、気配り上手な優しい男子にどうしたら巡り合えるんだろう……
ああ……モテたい!!!
残念な人
それなのに、どうしてこんなことに……
私の受難は……まだ、はじまったばかりだ
ここは……どこ……?
真っ暗で、何も見えない
気づいたか、少年よ
誰……?
私は、神だ
神?
また……ふざけたことを……
……お前は、随分と冷めているな
別に、通常運転ですよ
……ところでお前は、生前に転生を望んだな
生前……?
ああ僕、死んだんだ
まあ、望みましたけど
今、転生枠が一つ空いている。
へえ……ありがとうございます
まて、まだ私は何も言っていないぞ
いやいや、御冗談を。
つまり、僕を転生させてくださるってことでしょう?
嬉しい限りです。
それにしては、随分と冷めているな
生まれつき、ですから
……まあ良い。
お前は、転生に関して何か望みはあるか?
望み?
富が欲しい。力が欲しい。美貌が欲しい……
人間は皆、何かを欲するものだ
へえ……
別に、何もいりませんけど。
一体……何故?
僕みたいな最低な人間に力を与えようなんて……そんなの馬鹿がすることですから
…………
ただ、まあ。一つだけ
……なんだ?
できれば、今とは違う世界に行きたいです。
魔法の世界でも未来の世界でも何でもいいんで
分かった……お前の望みを叶えてやろう
ありがとうございます
つづく