シュウヤ

へえ……

シュウヤ

お姉さんが興味本位で転生魔法を試してみたから……僕がここへ飛ばされたと

シュウヤ

つまり、僕がやってきたのはお姉さんのせい

シュウヤ

それなのに、僕を見捨てようとするなんて

シュウヤ

やっぱり極悪人ですね

ミロク

違う……ちょっと、状況についていけなかっただけで……

ミロク

ていうか、なんでそんなに落ち着いているの!?

ミロク

本当に……違う世界から来たんだよね……?

シュウヤ

そうですよ

シュウヤ

少なくともこんなお城みたいな学校なんてない世界ですね

シュウヤ

迷子になりそう

私が転生させてしまった不思議な少年

異世界から来た割には落ち着いているし、口は悪いし……

彼は一体何者なのだろうか。

シュウヤ

そういえば、お姉さんの名前聞いていなかったです

ミロク

ああ……

ミロク

私は……ミロク

シュウヤ

……それが、名前ですか?

ミロク

そうだけど……

シュウヤ

へえ……変わってますね

ミロク

そう……? 別に、よくある名前だと思うけど……

シュウヤ

ああ、こっちの世界ではそうなんですか

シュウヤ

僕はシュウヤって言います。

ミロク

聞いたことのない名前ね

シュウヤ

僕の世界ではありきたりですけどね

ミロク

へえ……

シュウヤ

ミロクお姉さんは……年はいくつですか?

ミロク

十八……だけど

シュウヤ

へえ……僕は十六です

ミロク

じゃあ、高校生?

シュウヤ

ああ、こっちにも高校って概念があるんですね

シュウヤ

高校生ですよ。一応

シュウヤ

学校なんて久しく行ってないですけど

ミロク

……そう

さっきも言っていたけど……何か訳ありなのかな……

レミ

あれ……ミロク?

ミロク

レミ……? どうしてこんな時間に?

レミ

ちょっとある子の魔法の補習に付き合っていてね……

ミロク

ああ、察した

レミ

もう……あの子がいなければ彼氏と一緒に下校できたのに

ミロク

……彼氏ねえ

レミ

ああ、ごめんごめん。ミロクに『彼氏』は禁句だったね

ミロク

よ、余計なお世話!

レミ

ほんと……普通にしていればモテそうなのに

ミロク

だよねえ……超優良物件だよ、私

レミ

自分でそういうこと言っちゃうところがあるからモテないんだよ

ミロク

え……?

レミ

自覚なしか……

レミ

ところで、隣の方は?

ミロク

ああ……なんというか……

シュウヤ

こんにちは。ミロクお姉さんの親戚のシュウヤと言います

レミ

へえ……変わった名前ね

シュウヤ

よく言われます

ミロク

…………

ミロク

何この態度!!

レミ

今日は学校を見学に?

シュウヤ

はい、魔法学校がどんなところなのか気になったので

レミ

そうなのね。まあ、大したところじゃないけどどうぞ楽しんで

シュウヤ

ありがとうございます

ミロク

ちょっと……私の時と、態度が違いすぎない?

シュウヤ

……なんとなく、転生とか言っちゃいけない人種かなあ、と

ミロク

転生のことを隠すとしたって、態度が違いすぎるでしょ!?

シュウヤ

まあ、なんとなく

シュウヤ

苦手なタイプっぽかったから

ミロク

何か言った?

シュウヤ

いえ、なんでも

シュウヤ

ところで

ミロク

ん?

シュウヤ

僕は、お腹が空きました

ミロク

ええっ

シュウヤ

人間ですから、お腹は空きますよ

ミロク

まさか、私に何か食べさせろと……

シュウヤ

僕、お金とか持っていませんし

ミロク

…………

ミロク

分かった……奢ればいいんでしょ

シュウヤ

ちょろい

ミロク

はあっ!?

シュウヤ

いえ、なんでも

ミロク

今のは聞こえていたからね!!

シュウヤ

それは残念です

ミロク

まあ、そろそろ夕食の時間だし……

ミロク

転生させたのは私だ……

ミロク

ついてきて

シュウヤ

ありがとうございまーす

ミロク

はぁ……

何故私が、こんな失礼な男子にご飯を奢る羽目に……?

ミロク

理不尽だなあ

シュウヤ

なんですか、このボロ家

ミロク

ボロ家って言うな!

ミロク

私が借りている下宿だから

シュウヤ

一人暮らしなんです?

ミロク

私が生まれた田舎には魔法学校がないから……

ミロク

高校に入るために下宿してきたの

シュウヤ

ふうん

ミロク

何その興味なさそうな感じ

シュウヤ

人様の家庭事情とか正直興味ないんで

ミロク

…………

いちいち、イラっとさせてくるなあ!

シュウヤ

で、何かごちそうしてくれるんですか?

ミロク

自分の分のついでにつくるだけだからね

ああもう……どうして、こんなことに

ミロク

とにかく、入って

結局……私はこの生意気な少年を家へ招き入れることになってしまった

シュウヤ

おお……中は案外普通

シュウヤ

でも、ネズミとかいそう

ミロク

いちいち文句言うなら帰って!

シュウヤ

帰るって……どこに?

ああ、そうだ

ミロク

帰り方、分からないんだった

どうすればいいんだろう

ミロク

とりあえず、ご飯作るから……その辺に座ってて

シュウヤ

はーい

とりあえず、パンは買ってあったし、シチューとパンのシンプルな夕食でいいかな

私は、早速料理にとりかかった

シュウヤ

…………

シュウヤ

…………ちょろすぎて、逆に心配

ミロク

何か言った!?

シュウヤ

いえ、何も

ああ、もう……先のことが、全然分からないなあ

つづく

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