私が転生させてしまった不思議な少年
へえ……
お姉さんが興味本位で転生魔法を試してみたから……僕がここへ飛ばされたと
つまり、僕がやってきたのはお姉さんのせい
それなのに、僕を見捨てようとするなんて
やっぱり極悪人ですね
違う……ちょっと、状況についていけなかっただけで……
ていうか、なんでそんなに落ち着いているの!?
本当に……違う世界から来たんだよね……?
そうですよ
少なくともこんなお城みたいな学校なんてない世界ですね
迷子になりそう
私が転生させてしまった不思議な少年
異世界から来た割には落ち着いているし、口は悪いし……
彼は一体何者なのだろうか。
そういえば、お姉さんの名前聞いていなかったです
ああ……
私は……ミロク
……それが、名前ですか?
そうだけど……
へえ……変わってますね
そう……? 別に、よくある名前だと思うけど……
ああ、こっちの世界ではそうなんですか
僕はシュウヤって言います。
聞いたことのない名前ね
僕の世界ではありきたりですけどね
へえ……
ミロクお姉さんは……年はいくつですか?
十八……だけど
へえ……僕は十六です
じゃあ、高校生?
ああ、こっちにも高校って概念があるんですね
高校生ですよ。一応
学校なんて久しく行ってないですけど
……そう
さっきも言っていたけど……何か訳ありなのかな……
あれ……ミロク?
レミ……? どうしてこんな時間に?
ちょっとある子の魔法の補習に付き合っていてね……
ああ、察した
もう……あの子がいなければ彼氏と一緒に下校できたのに
……彼氏ねえ
ああ、ごめんごめん。ミロクに『彼氏』は禁句だったね
よ、余計なお世話!
ほんと……普通にしていればモテそうなのに
だよねえ……超優良物件だよ、私
自分でそういうこと言っちゃうところがあるからモテないんだよ
え……?
自覚なしか……
ところで、隣の方は?
ああ……なんというか……
こんにちは。ミロクお姉さんの親戚のシュウヤと言います
へえ……変わった名前ね
よく言われます
…………
何この態度!!
今日は学校を見学に?
はい、魔法学校がどんなところなのか気になったので
そうなのね。まあ、大したところじゃないけどどうぞ楽しんで
ありがとうございます
ちょっと……私の時と、態度が違いすぎない?
……なんとなく、転生とか言っちゃいけない人種かなあ、と
転生のことを隠すとしたって、態度が違いすぎるでしょ!?
まあ、なんとなく
苦手なタイプっぽかったから
何か言った?
いえ、なんでも
ところで
ん?
僕は、お腹が空きました
ええっ
人間ですから、お腹は空きますよ
まさか、私に何か食べさせろと……
僕、お金とか持っていませんし
…………
分かった……奢ればいいんでしょ
ちょろい
はあっ!?
いえ、なんでも
今のは聞こえていたからね!!
それは残念です
まあ、そろそろ夕食の時間だし……
転生させたのは私だ……
ついてきて
ありがとうございまーす
はぁ……
何故私が、こんな失礼な男子にご飯を奢る羽目に……?
理不尽だなあ
なんですか、このボロ家
ボロ家って言うな!
私が借りている下宿だから
一人暮らしなんです?
私が生まれた田舎には魔法学校がないから……
高校に入るために下宿してきたの
ふうん
何その興味なさそうな感じ
人様の家庭事情とか正直興味ないんで
…………
いちいち、イラっとさせてくるなあ!
で、何かごちそうしてくれるんですか?
自分の分のついでにつくるだけだからね
ああもう……どうして、こんなことに
とにかく、入って
結局……私はこの生意気な少年を家へ招き入れることになってしまった
おお……中は案外普通
でも、ネズミとかいそう
いちいち文句言うなら帰って!
帰るって……どこに?
ああ、そうだ
帰り方、分からないんだった
どうすればいいんだろう
とりあえず、ご飯作るから……その辺に座ってて
はーい
とりあえず、パンは買ってあったし、シチューとパンのシンプルな夕食でいいかな
私は、早速料理にとりかかった
…………
…………ちょろすぎて、逆に心配
何か言った!?
いえ、何も
ああ、もう……先のことが、全然分からないなあ
つづく