私は、モテない

別に容姿だって中の中くらいだと思うし、
特別性格が悪いとも思っていない。
それに、恋愛に非積極的なわけでもない。

勉強もそこそこできるし、魔法の技能だって優秀な方だし、正直自分では結構な優良物件だと思っている。

のに!

何故か、私はモテない!!

ミロク

はぁ……

ミロク

作業……続けるか

今日だってこうやって先生の手伝いで図書室の本の整理なんてやっているのに……どうして男子は私に目を向けないのか。

この世界は、どこかおかしいような気がする。

ミロク

ん?

ミロク

うわっ

まずい、さっき積んでおいた本が崩れる……そう思った時には時すでに遅し。

ミロク

ううっ……

一部は食い止めたものの、本がいくつも落ちてきてしまった。これでは……片付かない。

ミロク

ついてないなあ……

ミロク

あれ……

ミロク

何だろう……この本

私は、落ちてきた本の中に一冊、おかしな本が混じっていることに気が付いた。

タイトルのない、薄っぺらい本。
表紙のマークからすると魔導書だろうか

ミロク

……見ちゃいけないもの見ちゃったかな

そう思いつつも、なんとなく気になって本を開く

ミロク

異世界へ……繋がる魔法?

ミロク

…………

ミロク

異世界って……

異世界か……あまりにファンタジーチックすぎてにわかには信じられないけど……

もし異世界なんてものがあったら、私もちゃんと男子からモテることができるのだろうか

ミロク

……ものは試しだ

私は、魔導書に書いてある手順に目を通し、鞄から自分の杖を取り出した

私の得意魔法は『祈り』

どうやらこの魔導書に書かれている魔法とは相性がいいみたい

ミロク

アンファング……

ミロク

メーディウム・メーディウム・メーディウム

ミロク

ツァイト・ザック・ヴェルト

ミロク

エンデ!

ミロク

…………っ

ミロク

…………

呪文を唱えて、魔法陣を描いてみたけれど……何も、起きない。

ミロク

やっぱ怪しい魔導書は所詮眉唾物だよね

まあ、試してみて何かあっても怖いんだけど……そう思いながら本を閉じて、また本の整理をしようと顔を上げると、

シュウヤ

……………

ミロク

…………

シュウヤ

…………

ミロク

だ、誰!?

シュウヤ

……ここ、どこ?

ミロク

え…………

目の前に、変な人が現れた。

見たことのない服装。
この国のものではない髪色。

この学校の生徒には見えないし、一体どこから入ってきたのだろう……

ミロク

妙に、落ち着いているのも気になる

シュウヤ

もしかして、あんたが神様……?

ミロク

か、神様!?

シュウヤ

んあ? 違うの?

ミロク

どうしよう……不審者? には、見えないし

一体、何者!?

シュウヤ

神様じゃないか……でも、転生は成功しているっぽいし……ここが異世界なのかな

ミロク

異世界!?

シュウヤ

ああ……うん。
お姉さん、『日本』って知ってます?

ミロク

ニホン……? 何それ

シュウヤ

知らない……ってことは、やっぱり異世界か

ミロク

な、何を言って……

シュウヤ

……僕、お姉さんとは違う世界から来たんです

シュウヤ

なんていうか……異世界? から

ミロク

な……っ

確かに、私は異世界へ繋がる魔法を試してみた

でも、それがまさか。

ミロク

い、異世界から人を呼び寄せちゃうなんて……っ

シュウヤ

…………?

そんなの、知らなかった!!

ミロク

どうしよう……もう一回魔法を使って帰ってもらうべき? 

ミロク

ていうかなんでこの人こんなに落ち着いているの……

シュウヤ

ねえお姉さん、ここってどこなんです? 図書館?

ミロク

え? えっと……学校の図書室だけど……

シュウヤ

学校……この世界にも学校ってあるんだ

ミロク

……あなたの世界にもあるのね

シュウヤ

まあ……

シュウヤ

僕は行ってませんでしたけど

ミロク

そ、そう……

シュウヤ

こっちの世界の学校は何を勉強しているんです?

ミロク

何って……普通に語学とか数学とか……あとは、うちは魔法学校だから魔法の授業もあるけど……

シュウヤ

魔法……!

シュウヤ

ここは魔法の世界なんだ

ミロク

魔法の世界って……

まるで、魔法がない世界があるかのような……

いや、もしかしてあるのかな……魔法のない世界っていうものが

ミロク

想像つかないけど……

魔法のない世界って……なんだか不自由そうなイメージ

シュウヤ

お姉さん、今、暇?

ミロク

えっと……本の整理済まさないといけないから……

シュウヤ

じゃあ、その後とか

ミロク

その後なら……まあ……

シュウヤ

じゃあ、もしよろしければこの世界を案内してください

ミロク

ええっ

シュウヤ

………………

シュウヤ

お姉さんは

シュウヤ

この世界を全く知らず、右も左も分からない人間を見捨てることができる極悪人なんですね……

シュウヤ

残念です

ミロク

な……っ!?

何その言いがかり!!

ミロク

分かった……作業が終わったら案内するから……

シュウヤ

ほぅ

シュウヤ

ちょろい

ミロク

なっ!?

シュウヤ

冗談です

シュウヤ

冗談をいちいち真に受けていたらモテませんよ、お姉さん

ミロク

なんで私がモテないことを……!?

シュウヤ

え…………

シュウヤ

適当に言っただけなのに当たってるなんて……ちょろい人ですね

ミロク

失礼な!!

シュウヤ

ま、終わったら声をかけてください

シュウヤ

まってまーす

ミロク

…………っ

目の前に突如現れた、異世界から来たという失礼な少年

彼は一体何者なのか……それに、どうして私がここまで罵倒されなければならないのか……!?

ミロク

事態が……飲み込めない……

これから、一体どうなっちゃうの!?

……つづく

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