青い空と白い砂浜

      海の家に屋台も繰り出して

       大勢が楽しく遊んでいる

   そんな中に、恵巳は彩希を引っ張り出す

恵巳

ほらほら、行くわよ
連いてきなさい、彩希

彩希

あ、うん。ちょっと待って

   恵巳に呼ばれ、彩希は一瞬迷いを見せる

       視線の先は、好きな人

   バーベキューの用意をしている直人だった

直刀

食材の入ったクーラーボックス
持って来たぞ

菜桜

ん、じゃ、次は木炭持って来て
私は、クーラーボックスの中身
確認しとくから

直刀

了解。車に取り行くついでに
なにか飲み物いるか?

菜桜

おごってくれるなら~

直刀

ちゃっかりしてるな

菜桜

へへ~、もちろんおごって
くれるんだよね、お兄

直刀

レッド○ルで良いんだろ?

菜桜

それは追い込みの時
専用なの。ファ○タ
が好いの

直刀

オレンジ味で良いんだよな?
じゃ、買ってくれるよ

菜桜

さすがお兄さま
待ってま~す♪

彩希

…………

      自然と視線が向いてしまう

         すると恵巳が 

恵巳

ちょっと、なにボーっと
してるの彩希。約束したでしょ

     拗ねたように声を掛けてくる

         慌てて彩希は

彩希

うん、行こうか

        自分の恋心よりも

       友達との約束を優先し

        恵巳の傍に走り寄る

恵巳

ふっふ~ん、じゃ、行きましょうか

彩希

どこに行こっか?
恵巳ちゃん、どこが好い?

恵巳

そ~ね、屋台は後のお楽しみ
ってことで

恵巳

ちょっとあっちの岩の辺
見に行ってみない

恵巳

ああいう所の岩のくぼみに
海の生き物が居たりするって
パパが言ってたもの
ちょっと見てみたい

彩希

自然の水族館って感じだね

彩希

うん、行こう。楽しみ

恵巳

じゃ、行くわよ

    そうして2人は、砂浜の端にある

      岩場に向かって歩いていく

    もちろん、お喋りを楽しみながらだ

彩希

平日だけど、人が多いね~

恵巳

夏休み時期だからでしょ
私達だってそうじゃない

彩希

そう言えば、そっか。お仕事してるから
ついつい、忘れちゃうんだよね

恵巳

私達、まだ高校生なのにね~
働かせすぎだと思わない?

彩希

しょうがないよ。私達みたいに
能力持ちじゃないと、出来ない
仕事だもん

彩希

恵巳ちゃんみたいに
すごい子が頑張ってるんだもん
私も、頑張らないと

恵巳

ま、まぁ、そうね

恵巳

でも彩希だって頑張ってるでしょ

彩希

恵巳ちゃんが、いつも助けて
くれるからだよ。だから
頑張れるの。恵巳ちゃんの
お蔭だよ。いつもありがとう

恵巳

べ、別にそんなの……いいわよ
私は、その……――

 彩希の言葉に、恵巳は恥ずかしそうに口ごもる

       そんな恵巳を――

彩希

かわいい、恵巳ちゃん

    彩希は、くすりと笑いながら想う

恵巳

ちょ、なによ。人の顔見て

彩希

え、あ、かわいいな~って
想って

恵巳

な、なな、なに言ってんのよ!
別にかわいいって、そんな――

彩希

恥ずかしがらなくても良いのに
恵巳ちゃん、かわいいし綺麗だもん

恵巳

う~、も~

         素直な気持ちを

     そのまま口にするような彩希に

      恵巳がどこか甘えるように

      困った顔をしている時だった

こんにちわー

君達2人だけなの?
暇なら遊ばない?

      ナンパ野郎がやって来た

恵巳

……はぁ?

      彩希とのお喋りを邪魔されて

     あからさまに不機嫌になる恵巳

  そんな彼女とナンパ男達がぶつからないように

彩希

ごめんなさい。私達
男の人達と来てます
他の人を当たって下さい

   すぱっと彩希が断る。すると男達は――

んだよ、男連れかよ
地味だから楽に行けると思ったのに

ははっ、ハズレだな~
そっちの地味なのはともかく
幻想人種は珍しいから
ちょっと味見るぐらいは
試したかったのにな~

うげっ、お前マジかよ
趣味悪ぅ

ゲテモノ食いも
たまには良いと思わね?

 まるで「心の中の想いをそのまま口にしている」

      かのように、べらべらと喋る

彩希

この人達……変だ

  男達の様子に、彩希が違和感を感じていると

恵巳

お前達、舐めてるの?

    恵巳が微笑みを浮かべ静かに言った

彩希

マズい

彩希

恵巳ちゃ――

   不穏な空気に、彩希が止めようとしたが

         すでに遅かった

恵巳

来なさい! 我が祖の使い達!

ひいっ!

なんだこれ!

     突如現れた蛇の群れに囲まれて

      ナンパ男達は大慌てになる

恵巳

あはははっ、なに慌ててんの?
男でしょ? もっと根性見せなさいよ 

彩希

恵巳ちゃん、ダメだよ

       すぐに止めに入る彩希

     これに恵巳は、拗ねたように

恵巳

なによ、怒ったの?

彩希

ううん、違うよ

彩希

恵巳ちゃんにも、恵巳ちゃんの
蛇達にも、怖がられるようなことを
させたくないだけ

彩希

恵巳ちゃんも、恵巳ちゃんの
蛇達も、好い子だもん

彩希

だから、こんなことするより
もっと一緒に遊ぼう

   そう言うと、彩希は蛇の群れの一匹を

     手に取ると、やさしく撫でる

恵巳

ん……ちょ、もぅ……

      使い魔として、感覚の一部を

        共有している恵巳は

       堪えるように声を上げると  

    世界の裏側にある幻想境から召喚した

        無数の蛇達を元に戻す

き、消えた!?

この……ふざけんなよ

    蛇が消えた途端、威勢が良くなり

    突っかかろうとして来るナンパ男

彩希

……

      無言で、恵美を守るように

         前に出る彩希

          けれど――

彩希

ひゃう!?

 腰に腕を回され、ぐいっと後ろに引っ張られる

彩希

おに、直刀先輩!?

直刀

お、懐かしい呼び方、しそうになったな

彩希

え、あ、それは、その――

直刀

気にすんな。それより――

直刀

女の子が、危ない事しちゃ
ダメだろ。こういう時は
助けを呼ぶもんだ

恵巳

なによ、今さらやって来て
遅いのよ

直刀

うん、そうだな。ごめん
だから後は、俺が相手するから

直刀

恵巳も女の子なんだから
無茶しちゃダメだぞ

恵巳

……余計なお世話

直刀

悪いな。その余計な世話を
させてくれ。さて――

直刀

お互い、これぐらいにしないか?
折角、遊びに来たんだ
楽しまないと、損だろ?

んだと、お前

  ぐいっと、直人の胸ぐらをつかむナンパ男

  けれど、微動だにしない直人に怯んだ所で

お、おい、それぐらいにしとこうぜ
周り、見てるぞ

  連れの男に言われ、舌打ちしながら手を離す

なんか気分悪っり~
他所行くか

ははっ、そうだな
ちょっと早いけど
酒でも飲み行くか

    2人で喋りながら、ナンパ男達は

        その場を後にする

彩希

あ、その、直刀先輩
ありがとうございました

直刀

どういたしまして

恵巳

別に、助けてくれって
頼んでないけどね

直刀

悪かったよ、勝手をして
でも、怪我がなくて良かった

恵巳

あんな奴ら相手に
怪我なんかする訳ないでしょ

直刀

そうだな。でも万が一ってことも
あるから。気を付けるに越した
ことはないさ

恵巳

……ふん! 行こう、彩希

彩希

え? う、うん

  恵巳に手を引っ張られ連れていかれる彩希

    そんな2人に苦笑しながら直刀は

直刀

さっきの2人……
なんか妙だったな……

     この場から離れるナンパ男達を

        直刀は眼鏡を外し

       静かに見つめるのだった

詰草彩希の告白物語・その②

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