……今度は道からスタートじゃないんだな


晴紘は見慣れた玄関先にいた。










今までの年代すら違えた
十一月六日は
この近くの道から始まっていた。


だが、今回は。




それを考えれば
この世界は
灯里と紫季がいる世界か――






今度は西園寺侯爵の過去編が始まるってわけじゃないだろうな



またしても違うのか。

いや。幼少期の灯里編とか幼少期の紫季編とかって線も考えられる

時計塔の彼女編ならちょっと見てみたい気もするけど……










それにしても気になるのは
前の世界で輝が受け取っていた
封筒のこと。

あれは十中八九、金(カネ)だ。











そう言えば、同窓会の席で
灯里は西園寺侯爵の援助を受けている
とも聞いた。





輝もそうだったのだろうか。
1体売れば家が買える人形とは言え、
元になる資金は要る。


もしくは
妻を取られたことへの

慰謝料、とか









瞳子は何故、
侯爵の元へ行ったのだろう。


ただ単に縁あって
侯爵の元に嫁いだのなら問題ない。

「撫子に似ている」という
理由がそこになければ。





だが、もし
「撫子に似ている」ことが
理由の最上位にあるのなら。






撫子に似ているとは言え、
顔が似ている「だけ」の赤の他人。

輝に言わせれば
性格は全く似ていない。



似せて作った人形ですら
違和感を抱くと言うのに、
そんな女をそばに置いたところで
自動人形以上に「別人」にしか
見えないだろうに。






娘なのか愛人なのか






……娘の代わり、ではないのか?

娘の顔をした女を後妻に迎えるとか、ゾッとしねぇなぁ

……いや。さすがに侯爵の性癖をでっちあげて想像するのは失礼だな





晴紘は首を振った。
過ぎたことを考えても仕方がない。


あの時、鐘が鳴ったのは
それ以上の情報は不要だと
そういうことなのだろう。















とりあえず、この世界でやることをするか



気合を入れ直すように呟き、

そして
あらためて玄関に目を向ける。

ここにいるってことは、第一関門はこの家に入れってことだ、よな






犯人というのは本当ですの?





ドアに手を伸ばしかけたその時、
紫季の声がよみがえった。




この世界が
灯里と紫季のいる時代だとして

この世界の自分は
ただの「大庭晴紘」だろうか。

殺人事件の犯人になっていたりは
しないだろうか。


また……通報されるのは……



玄関先に呼び鈴はない。


呼び鈴があったのは
灯里のいない世界。

自分がこの家の家長だと言われた
あの、偽りの世界。


そして


灯里がいて、通報された
あの日――。




どうしよう




それだけを見れば
今回は大丈夫そうだけれども。

でも。













そんな逡巡に
扉を開けることもできないまま
立ち尽くしていると

突然、


扉が開いた。










【陸ノ肆】十一月六日、六度・壱

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