竹内 蘭

久道様、お体の具合はいかがですか

松尾 久道

大事ない。背中を斬られはしたが、浅かったようだしな

竹内 秀政

久道様の御身に傷をつけてしまい、この秀政どのような処罰も受ける所存

松尾 久道

よせ秀政。浅傷でお前を罰しようものなら、私が父上にお叱りを受けよう。此度のお前の働きも実に見事だったしな

松尾 久道

傷は私の不覚が招いたこと。お前は素直に、自分の功績を誇れ

竹内 秀政

……勿体なきお言葉。痛み入ります

竹内 蘭

そういえば、柳はどこにいるのかしら……

…………

結城 忠政

柳殿、こちらだったか

忠政様……僕に何か御用で?

結城 忠政

帰陣してから其方をずっと探しておったのだ。先の戦では其方に助けられた故にな

結城 忠政

改めて礼を言いたい。救援、まことにかたじけない

お、お止めください。どうか頭をお上げ下さい僕ごときのために頭など……

それに、お礼を頂く資格もございません。僕は殿に……弾正様の命で見方を助けるために無我夢中だったのです。とても褒められた行為とは…………

結城 忠政

何を引け目に感じることがあるのだ? 味方を、それも敗走の危機に進んで助けようという者など決しておらぬ。それが殿の命であろうと従うどころか聞く耳すら持たぬ……それが人間という者だ

結城 忠政

それを、其方はあの戦況下で自ら鬼と刀を結んでいたではないか。それが弾正殿の命であろうとなかろうと、素直に誇るべき功績だと私は思う

忠政様……

結城 忠政

聞けば、高山殿にその傷をつけられたのだろう? 弾正殿の御子息である久道殿も妖怪をいたく毛嫌いしているようではあるし、其方は大変な苦労をしてきたのだな……

結城 忠政

私でよければ、其方の暮らしが多少は満足がいくように計らってみよう。秀政殿ほどではないが、私も弾正殿には覚えが良いのでな

………ありがとうございますっ

結城 忠政

其方はきっと、ここの誰よりも弾正殿の忠臣だ。ご自分に対して、もっと胸を張ってよいと私は思うぞ

松尾 弾正

…………

殿、酒を持って参りました

松尾 弾正

………うむ

何を見ていらしたのですか?

松尾 弾正

今宵は満月と思ってな

…………では失礼したします

松尾 弾正

待て柳。少し付き合え

………はぁ、承知しました

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