目覚ましの音が部屋に響く。

工藤 柊作

…………


俺はタオルケットをどかし、窓の外を見やった。
岸ノ巻は今日も快晴だ。

ドアをノックする音がした。
といっても、もう毎朝だから馴れてしまったが。

工藤 柊作

開いてますよ、露樹さん


首だけ動かし、声を張り上げる。

予想通り、そこには隣人がスーパーの袋を引っ提げて立っていた。
本人は照れくさそうに笑っている。

露樹 梓

おはよう。今日もよろしくね~


俺は思い切りため息をついた。

工藤 柊作

朝食ぐらい食パンで済ませられないんですか

10分後、俺は露樹さんと向かい合って自分が作った朝食を食べていた。

露樹 梓

味気ないもん。高校3年間ずっと朝食べてたら飽きるって

工藤 柊作

高校卒業してからはどうしてたんですか

露樹 梓

起きたら大学の途中にある弁当屋で二つ買ってた

工藤 柊作

待ってください。それを3、4ヶ月ずっと続けてたんですか

露樹 梓

そうだよ。高校の頃から燕ノ巣でバイトしてたし


燕ノ巣のバイト代ってどんだけ高いんだろうか。

露樹 梓

ま、夏休みはどうしようか考えてなかったんだけどね。特にサークルにも入ってないし、大学行く用事無いしさぁ

工藤 柊作

夏期講習とか無いんですか

露樹 梓

日数満たしてる奴らは別にいいんだってさ


しかし、普通の大学ってサークルは絶対参加じゃないのか。
夏期講習がない物なのだろうか。

露樹 梓

まぁ、運よく料理できる子が引っ越してきてくれたおかげで助かったわ

工藤 柊作

そろそろ露樹さんも料理覚えましょうよ

露樹 梓

いいじゃん、材料代は私が出してるんだし

工藤 柊作

朝っぱらから高校の後輩を使う時点で情けないと思ってください!

露樹 梓

そうカリカリするな若者よ♪ あ、味噌汁お代わり~

工藤 柊作

ったくもう……


あはは~と笑う隣人を見て何も言葉が出なかったのは言うまでもない。

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