…………本当に、お前は事実を話しているのか?

俺は契約通り事実を話してる。
信じないのはお前の勝手だ

……さっきも露骨に嘘を吐いておいて、よく言えるものだな

後からちゃんと話しただろ

……先ほどの俺の説、この男は納得したかのような口ぶりはしたが、「肯定」はしていない

認めなければ、俺の考えが間違っていたとしても、嘘を吐いていることにはならない……

アダムスキーが酒場に来た意味は?


一日目夜、アダムスキーの部屋の窓に置かれていた機械は?


2日目午後、イリヤと別れたアダムスキーが向かったのは?


セミョーンがファイーナに頼んだこととは?


4日目昼、アダムスキーが樹海へ向かった理由は?


セミョーンが鏡から受け取ったメッセージは?


セミョーン、ファイーナは今どうなっているのか?

……嘘はついていなくとも、意識的に「話さない」ことはあるようだな?

聞かれないのに全てを話す義理はないからな

聞かれりゃ言うのか?

これまでも話しただろ?

……ところで。

イリヤと入れ替わる前についてのお前の持っている情報は、全てイリヤから聞き出したもののようだな?

それがどうかしたか?

ああ、これはお前に聞いたわけじゃない。確認しただけだ

実際のところは、イリヤ自身に聞いたからな

……

……つまり

お前は、死者の魂をわずかの間呼び戻す魔術を知っているわけか。

俺の正体もその時点で確信していたと……はっ、とんだ茶番だ

そういうことだ。

夜、接触したい人間の墓石か遺骨の上に哺乳動物の血を注ぎかけ魔力を捧げる……

普通なら呼び出しには困難が伴うが、今回は驚くほど「素直」に呼び出されてくれた。
よっぽど心残りだったんだろうな

死体の「食べ残し」は、確かに樹海の中に隠したはず……

なるほど、お前が町に居ないときは樹海の中で死体を探し回ってた、ってわけか?

2日目午後、イリヤと別れたアダムスキーが向かったのは?


4日目昼、アダムスキーが樹海へ向かった理由は?

まあ、そういうことだな。

ま、大陸からたった一人の逃亡者を探すような仕事に比べりゃ楽だからな。

樹海広しとはいえ……

「ほんのちっとばかし」骨が折れた程度だ

――――やっと、見つけた。

手間かけさせやがって。

「ほんのちっとばかし」ね……
よくもまあ、鼻の利く犬だ

俺がどれだけ苦労して隠したと思ってやがる……

……で?

何故そんな話を、今する?

他意はないさ。
ただ、お前の情報量を確認したかっただけだ

情報量……?
やはりさっきの話と繋がっているのか?

まるで、「イリヤの得た情報を思い返せば何か分かる」とでも示唆しているかのような……

やはり、「一日目」なのか?
あの日起こったことに、いったいどれほどの意味があると言いたい?
そしてそれを俺に気づかせる必要はあるのか……?

……ところで、お前がアルセニーを騙ったように、目立つデコイを置くのは良い方法だ。
誰もがその派手さに目を引かれ、他のことに気づきにくくなる

何が言いたい?

いや?
一般的な話をしたまでだ

一般的じゃなく、具体的に言えば……

……随分、雑に扱うな
「ソレ」

……そういうところだよ

投げ上げた機械を

雑に受け止めたアダムスキーは

そのまま手を返して指を離した。

?!

どういうつもり――

……なんだと?

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