ま、待っ……

一体どういうことだ?

何の話だ?

まさか飾り玉を付け替える程度のトリックが理解できなかった訳じゃないだろう?

とぼけるな

さっきの回想が――お前の話が正しければ、2つおかしな点がある

へぇ、2つもあったか?

白々しい顔をして……

まだ言及していないことがあるな? 話を聞けと言うなら、釈明して見せろ

まず第一に、先ほどの回想……

なぜ、3号室の鍵から、2つも飾り玉を外した?
2号室の鍵と入れ替えるなら、飾り玉は1つで良かったはずだ

……

そしてもう一つ……第二に

お前、自分の部屋の鍵はどうした?

……ふふ

鍵を「入れ替えた」だけなら、3号室の鍵を手に入れる代わりに、自室の鍵を失うことになる

だが、お前のような人間が自室のセキュリティをおろそかにするはずがない

実際、鍵をかけているのを確認したことがある……

1つ目だが、たまたま外しただけ、って可能性もあるぜ?
飾り玉だけをなんとなく持ってたのかもな

おいおい……

飾り玉一つの鍵を持ってるところを見つかったら確実にお前は困るだろ?
雑な返ししてんじゃねぇよ

飾り玉一つの鍵はお前の宿敵、セミョーン・モルチャリンの部屋の鍵の特徴。
セミョーンかシャルロッタに見つかったら、あぁあぁ、大変なことになるよなぁ?

もし疑いが晴れても、「飾り玉を外す」って発想を広めちまう。シャルロッタが怪しんで鍵が合うか調べちまったら困る

そんなリスクを負ってでも飾り玉を一つまで減らさなきゃならない理由があったんだな?

たしかにそう言われちゃ否定はできねぇな

じゃあ二つ目だ。

実は俺は、鍵を手に入れてすぐに部屋を調べていた。そして、すぐに鍵を戻して自分の鍵を取り戻した。
……ってのはどうだ?

……わざとらしく、すぐに反論できるような言い訳をしやがって

そもそも、それが可能なら飾り玉の付け替えなんざ必要ない。付け替えて戻すぶん無駄だ

分からないぜ? 部屋を調べているうちにタイムアップになる可能性を考えていたかもしれない。何か不測の事態があったら入れ替え作戦へ移行するように

そんだけ慎重に考えてりゃ鍵のことも思いつくだろ!

いや、俺が馬鹿だったかもしれねぇ

今更それはねぇよ
冗談きつい

……

……ま、良いか

で?
その二つの疑問から、お前はどう思ったんだ?

……指摘されるのを待ってたかのような言い方だな

何だ?
その、値踏みするような顔は……

落ち着け。何度もこの男の動きは見た。……早いが、そこまでではない。
急に攻撃されたとしても、この状況なら簡単に対応できる

なら言ってやろう。

自分の鍵を失わずに3号室の鍵を手に入れる方法……そして飾り玉のこと

――お前、セミョーン・モルチャリンの鍵を盗んだな?

そして、それを付け替え3号室の鍵の代わりにした

1日目の夜、セミョーンは鍵を失くしていた

――DAY 1――
「嘘ほどに雄弁」

実は、鍵を失くしちまってな

あんたが? 珍しいね

方法までは知らないが、お前が盗んだんだろ?
そして、その鍵を入れ替えのトリックに使った

2号室の鍵                       

3号室の鍵(細工)                      

                      1号室のスペア

2・4号室のスペア & 1号室の鍵(細工)

お前がすり替えに使った鍵には最初から飾り玉が一つしかなかった。
だから、3号室の鍵に見せかけるために飾り玉を二つ動かした……そうだろ?

……見事なもんだな。
確かにそこを黙ってたのはわざとだ

……

どうした?
ヒントもなしに言い当てたんだ、喜ばないのか?

そう、確かに指摘はした……が……

何故だ?

何故この男は、あえて黙っていた?

これを明かしたところで何も問題はない……はずだ。
時間稼ぎにしても稚拙……

リーリヤの手記の場所を何度もはぐらかしていた割には、回答があっさりしすぎている……

そして、自分で納得した答えを言ったはずなのに……

何故か俺自身が、この回答に、拭いきれない違和感を覚えている

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