――DAY 1――

さて、シャルロッタのことはひとまず置いておいて、視点を変えてみる

「1日目」にセミョーンが言っていたな

ここに来るたびに泊まるせいで、1号室は俺専用になっちまったけどな

そして、俺の部屋は2号室

イリヤは1号室だ

頭の片隅では誰しも思ったんじゃないか?
3号室に居るのは誰だ、と

俺は、それがリーリヤ嬢ちゃんだと……だったと、見た

嬢ちゃんの名義でごく最近まで部屋が借りられていた、あるいは、今も借りられている

後出しの情報で補足するなら、リーリヤ嬢ちゃんに接触する筈だった魔術師は、嬢ちゃんがサスリカにチェックインする直前まで泊まっていた

こんな辺鄙な地にそうそう客は来ない。1号室はセミョーンが占有しているってことは、初めて来た客が泊まるのは2号室だ。

だから嬢ちゃんは、3号室に泊まった可能性が高い

……そう考えると、嬢ちゃんの手記の続きがどんな内容だったのか、読めて来ないか?

リーリヤ(リーレニカ)

息子さんの話を、聞かせてもらえませんか?

アルセーニャのことを?

素敵な方だったと聞いて……

あらあら、誰がそんなことを言ったんだろうね

……こんな感じでしょうか?

上手い絵だね。あの子そっくりだ

まるであの子が、生き返ってきてくれたみたいだよ

私なら……

――最愛の兄、イリューシェチカには


彼にだけは、

知られたくありません。

そのためには、      


――――私は、手段を選びませんでした。

私なら、顔を変えて、声を真似れば、

アルセニーさんが生き返ったように

見せかけられるかもしれない。




実際に行方不明になった人々を真似ていた

私には、簡単に思いつく考えでした。




そして、そんなことを考え付いたのは

ただの善意ゆえではありませんでした。

今のままでは、シャルロッタさんを通じて、兄には絶対に私のことが少なからず、ばれてしまう。
私はシャルロッタさんに口止めをしなければいけないの

その対価として、「息子さんを少しの間だけ生き返らせて、会わせることができる」と言ったら……?

……シャルロッタさんは、

ひどく喜んでくれました。




そして私は、

謝ることすらできませんでした。

――もし

もし、この手記を見た方がいたら、私の代わりに、シャルロッタさんに謝罪の気持ちを、伝えていただきたいのです。
それが、私がこの出来事を記しているもう一つの理由。

信じていただくのは、そして、そんなことをしていただくのは、虫の良い話だと分かっています。

それでも、どうか、お願いいたします。

私にはもう、
これ以外に方法がないのです……

最後の部分は残っていないから、想像するしかできないがな。

まあ、そもそも1日目には手記の存在すら知らない。これも後付けの根拠だ

あの部屋には嬢ちゃんの情報が残っている可能性は高かった、後から考えても辻褄は合った、ってことだ

だが、いくらそこにヒントがあろうと、シャルロッタに直接3号室を開けさせることなんざできねぇからな。
こっそり「お借りする」ことにしたのさ

問題は、3号室の鍵が取られたことをシャルロッタに気づかれないように細工しなきゃならねぇって所だが……

まあ、そんなことは造作もねぇ

飾り玉を2つ外した3号室の鍵

俺の持ってる鍵と付け替えて、飾り玉の数を変えちまえばいいんだからな

鍵自体の外見は瓜二つ。
実際鍵穴に差し込んでみなければ分からねぇ

俺の持ってた鍵に、飾り玉を足す。
これで、「3号室の鍵」の出来上がりだ。

あとはこれを、本物の3号室のスペアの代わりに箱に入れておく

3号室の鍵に偽装した鍵          

俺はさっきまで持っていた鍵の代わりに、3号室に入れるようになるってわけだ

          飾り玉を2つ外した3号室の鍵

……これだけのことをして手に入れた鍵で、さらに誰もいない隙を狙ってようやく3号室に入った

そこでベッドの下に周到に隠されていたのが、この手記だった

 | | | | 1日目夜②(PCでの閲覧推奨)

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