……また


晴紘は月のない夜空を見上げた。


鐘が鳴る前は
西園寺邸の前にいたのに
今いる場所は
そこから数キロ離れた森園邸近郊。



いつも

いつも

いつも

気がつけばこの道にいる。


























儀式のように時計を見れば、


一時五分。いつもの時間。


くそっ



あと少しだったのに。

そんな思いがよぎる。




それにしても……今度はいつの十一月六日に飛ばされたんだ?


願うことなら先程の続きを。

そう思うけれど
それはきっと叶わない。

あの時間の続きは
「一時五分」ではない。












ならば、
ここはいつの十一月六日だろう。

晴紘が犯人にされた夜か、

木下女史が殺害された夜か、

灯里がいなくなった夜か、



そもそも、この世界に
灯里の父親はいるのか。






















西園寺邸で出会った
森園灯里の母を名乗る女は

灯里の父親なら
「西園寺撫子」を知っていると言った。














この先には灯里の家がある。

もしこの世界でも
父親が生きているのなら

彼はきっと、その家にいる。














































はは。変わんねぇな


見慣れた家の外観にほっとしつつも

そこに住んでいるのは
見知らぬ相手かもしれないという、
むず痒(かゆ)くなるような
焦燥も感じる。

でも




今回ばかりは
此処にいるのが灯里や紫季では
ないことを願う。





そういやぁ……自動人形の「撫子」は、灯里の父親の作品だったな
































玄関先には
見覚えのある呼び鈴。




何度目の過去で見た、
「自分の知る森園邸には無いはずの」
呼び鈴だ。



と言うことは、
ここは元いた世界ではないと
立証されたことになる。






さて、何が出てくるか……

晴紘は呼び鈴を押した。







【陸ノ参】十一月六日、五度・壱

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