誰とも会わなくなる。
そして食欲がなくなる。
今、分かっているのはこれだけ。
そしてその原因があの箱に起因しているということ。
大雑把で正確でない部分があるかもしれないけど、三人の行動を辿ればそう考えるのが無難だ。
だけど例外がある。
私だ。
一番箱に触れ、近くにいる私にその症状といえる現象が起きていない。一応あの箱の現在の所持者は私だけど、所有者には害を及ぼさないとかかな。
そして謎ばかりで後回しにされていたことだけれども、結局あの箱は誰が入れたものなんだろう。
誰とも会わなくなる。
そして食欲がなくなる。
今、分かっているのはこれだけ。
そしてその原因があの箱に起因しているということ。
大雑把で正確でない部分があるかもしれないけど、三人の行動を辿ればそう考えるのが無難だ。
だけど例外がある。
私だ。
一番箱に触れ、近くにいる私にその症状といえる現象が起きていない。一応あの箱の現在の所持者は私だけど、所有者には害を及ぼさないとかかな。
そして謎ばかりで後回しにされていたことだけれども、結局あの箱は誰が入れたものなんだろう。
あれ?
俺なの?
もう酔ってるから
そんな気がしてきた。
正木先生……、ってそんなこと絶対に……と言えるだろうか。
もちろんそう思いたくない。それに甥っ子である龍太郎も被害にあっている可能性が高いし。近くにいる家族だから逆に……なんて考えてしまうのは、サスペンスの読みすぎだろうか。
でもやっぱり怪しいのは――
特段開かないとかかな。
アンティークで
眺めて楽しむとか。
結局は友也君が言ったこの言葉で落ち着いたんだ。
寡黙であまり表情も崩さないから何を考えているのかわからないし、怪しいと言えば先生よりも遥かに怪しい。
でも蛹室物語に辿り着くのも手伝ってもらったし……。も、もしかしたらあのサイト自体がそもそも嘘じゃ……。
いや、仮にそうだとしても、あの箱の呪いじみた力はどう説明するの? 分からなさすぎる。私の理解の範疇を越えている。未知――――未知故の恐怖か。少し前に調べた内容が思いだされる。
確かに私の心情を表すなら、恐怖が大部分だろう。だけど何とか突破口になる手掛かりを見付けようとする勇気みたいなものが底辺にある。
誰が? 何の目的で? 次々と湧いてくる問いの答えは、やはり蛹室物語、ここに隠されているとしか思えない。そう思い、昨日から一睡もせずに読み続けているんだ。
ここまでの話の流れはこうだ。
蛹室物語の主人公は裕福な家庭に生まれ、何も不自由することなく暮らしてきた。
言語学者となり、人の言葉の歴史を、国・民族・貴賤を問わず研究し続けていた。
そんな主人公が、何よりも信じていた考え方がある。
『言葉には力がある』
あらゆる著書や文献を読み漁り、必要とあらば現地に赴き調査をした結果だ。悟りにも似た確信と言えた。
そして言語を学ぶということは、人の生活に深く触れることだ。そして主人公は人の恐怖について深く考えることになったんだ。
私は『言葉に力がある』ことに
確信を持っている。
それは疑いようのない事実。
言葉で争いを止めることも出来る。
融和・結束・発展。
いくつもの力強い言葉が
人類を進歩させてきたのは
想像に難くない。
私も世界中の人達と
言葉を交わし
心を交わしてきた。
今でも思い浮かぶ大勢の顔。
異国の地で私をもてなしてくれた人々。
――善意。
私は間違いなく善意を
肌で感じていた。
そしてその善意は
私を心の底から優しくした。
そして改めて確信した。
言葉には人を勇気付け、
前進させてくれる力があるのだと。
わかる。
ものすごく。
るりの優しい笑顔と強気なセリフを思い出した。いつも傍にいてくれて、塞ぎがちだった私に元気をくれた。胸に熱いものが込み上げてきて、やっぱり頑張ろうってなれた。
言葉に力があるというのは、誰しもが経験のあることなんだ。それを強く認識しているかどうかの違い。きっとこの主人公は、そのことを深く理解しているんだ。
(世界中を旅するシーン中略)
その日、私はとある軍需大国に、
スパイ容疑を掛けられ捕縛された。
私の言葉は信じてもらえなかった。
流暢に現地語を話せたのがあだとなり
悪い方向にばかり話が進んだ。
酷い拷問の日々。
肉体的な拷問など可愛く思えたのが
言葉による拷問だった。
否定的で悪意と侮蔑に満ちた言葉は
私の心の中の平和を終わらせた。
戦争が終わり、私は解放された。
心の底に決してなくならない泥が
蓄積しており、
身体の内側から
常に猛毒を吐き出し続けた。
これを書いている今も何も変わっていない。
私の確信……
その逆……、
裏側……、
私は反作用的な力に気付き始めた。
そして言葉に恐怖した。
言語学者が言葉に恐怖してしまえば、
何も出来なくなる。
私は発狂し苦しみ抜いた。
数年後…………
私は、
恐怖を克服する方法を見つけ出した。
それは、
自らが恐怖の対象となることだった。