――月曜日。




 私は人生で二度目のずる休みをしている。



 一度目は大好きなラノベ作家のサイン会があった時。るりに勧められて読んだライトノベルが、想像以上に面白くてそこからファンになった。二人でずる休みしたので単純に楽しかったし、いけない事をしている背徳感が不思議なほど気持ちを高揚させたのを覚えている。





 それはさておき、今回のずる休みは蛹室物語(サナギモノガタリ)を読む為だ。

 膨大な量の文章量があり、それはこうでもしないと消化しきれないからだ。昨日、友也君に導いてもらったこのサイト。殆ど寝ないで読み進めてるけど、特に手掛かりになる事は載っていなかった。だけどまだ五分の一も読んでないので、未読の部分に重要なヒントがあるかもしれない。




 今まで読んでいる所までを大筋と言うか雰囲気で言っちゃえば、こんな感じだ。

 主人公目線の物語。一人称視点で進んでいくので感情移入はしやすいと思いきや、淡々と語られるその物言いは、正直退屈なものだった。趣味とは言えど同じ物書きとしてその腕を疑いたくなる。まぁ、おそらくこれは楽しませる為に書かれたものではないからしょうがないか。

 主人公が観察してきた人間の恐怖心に関わる記述が多い。人の恐怖を克明に記した内容で、気分が重くなる。




 恐怖と言えば、るりが私達から逃げていったのも何かの恐怖からなんだろうか? 私は少し気になりインターネットで軽く検索してみる。昨日、友也君が言っていた検索方法を幾つか試してみた。





 私が選んで閲覧した内容は、恐怖には大きく分けて三つの種類があると書いていた。

1、肉体的恐怖

身体的な被害や
延長線上には死を連想する恐怖。

2、精神的恐怖

知識に起因するもので
恐ろしい未来を想像する恐怖。

3、未知の恐怖

自分の知らないものに対する恐怖。

 まぁ、簡単に三つに分類されるわけではないし、お互いが密接に関係しあってるのが大体分かった。




 るりにも当てはまりそうな感じはする。


 ごはんを全部捨てていたのは、拒食症とかかな? 食べて太ってまうことへの恐怖かな。身体が直接傷付くわけではないけど、それに近しいものがあるかも。

 もしくは急に将来が不安になったり、少しのことで友達との関係に不信感を抱いたりとかだろうか。私は特に何もしてないつもりだけど、知らない間に傷つけたりしちゃったかも……。


 ちょっと強引に関連付けたりしてる気がするけど、その延長線上にいるかもしれない。




 延長線上――――









 


 私はこれまで生きて来て、恐怖と出会ったことがあるんだろうか……。今迄なら、子供の頃、近所の
大きな犬に吠えられたとか、学食で140円しか持ってないことに気付いたとか、スマホに架空請求がきたとか答えてしまいそうだけど、そんなものじゃない。友達や先生が部屋に来たからって、タンスや机でバリケードを作ったりして窓から逃走する程、何かに怯えた事はない。


 るりの状態は分からないけど、やっぱりあのサイトの続きを読もう。あの箱の正体も判明するかもしれないし、想像ばかりしていても何も進展しなさそうだ。



 背中・頭・手、眠気に効くツボを自分で押してから大きく背伸びしてみる。砂糖の沢山入ったコーヒーでも淹れて、続きを読んでいこう。

次の日へ続く 

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