――2月22日、日曜日。

 龍太郎が寝坊して来ない。

アゲハ

しょうがないよ。
ほっといて3人で探そう

 まったくもう、寝坊助なんだから。

 そうして3人で始めることに。友也君に経緯を話してみた。静かに私達の話を聞いた後、友也君はゆっくりと口を開いた。

友也

検索の仕方は多種多様だ。
膨大にある情報から欲しい情報を
見つけるにはコツがいる。
僅かな知識があるかないかで
随分とそのスピードは
上がるものだよ。

 淡々と話しながら操作する友也君。

友也

簡単なものなら、
and検索、そしてor検索。
この辺はあまり知らなくても
自然に使用しているものだ。
そして要らない情報を
表示しないマイナス検索。
特定の検索ワードの前に
-(マイナス)を入力してやると
そのワードは除外される

真悠

へぇ~。

 そう言いながら友也君はキーボードを叩く。そのスピードは私の何倍も早かった。先週鑑賞した洋画の中に出てくるプログラマー、主人公の相棒の姿が重なった。

友也

そして特定のサイトや
タイトルだけで
検索する方法もあり、
そして
ダブルクォーテーションで
挟むと完全一致のみの
フレーズ検索となる。

 そう言葉を連ね最後のエンターキーを押した時、一つのいかがわしいサイトが画面に映し出された。

 真っ黒な画面に黒みがかった赤い文字。

『来世への変身』

 見るからに怪しい内容。何かの偶然でこのサイトに辿り着いたとしても、今迄なら間違いなく先に進んだりしないだろう。

 友也君はサイト内にザッと目を通す。それから又、タタタタとキーボードを打ち始める。もう、私には何をしているのか分からなかった。おそらく友也君も説明しても追いつかないだろうと、操作に専念している。そしてサイト内にある一つのリンク先を目の前にして、私達の方に振り向いた

友也

結論から言えば、
おそらくこの先に
その箱の情報があるはずだ。
残念ながら
このサイトの運営が
何者かは分からなかった。
幾つかその手掛かりを
見付ける方法があるんだが、
どの方法でも不明だった。

 私は淡々と話す友也君が凄く頼もしく見えた。そしてそのリンク先。違う色になった羅列している文字が不気味に写る。

アゲハ

すごく不安なんだけど大丈夫?

友也

運営は分からなかったが、
ウイルスに感染したり
することはない。
その辺は心配しなくていい。
閲覧数は少な目の
2400程度だ。

真悠

友也君、
こんな短時間で色々な事を
調べてたんだ。

 タン

 エンターキーが押された。

 画面は真っ暗になり何も表示されない。パソコンからは稼働音が微かに聞こえるし、電源は入っている。

真悠

…………?

 友也君も分からないようで、沈黙している。その沈黙に耐えられなくなって、アゲハが口を開く。

アゲハ

何もないよ。
このリンク先は違うんじゃない?

 私も同意見だ。友也君が探し出したサイトは、間違ってたんだ。友也君もそう思ったのか少し溜息を漏らしている。

真悠

なんで友也君はここだと思ったの?

 私の質問に対して目を逸らす友也君。残念そうにしていると思ったら、いつもより張りのある声で答えてくれた。

友也

……説明が長くなるから
そこは省くよ。
時限式のサイト、
そういうのが
あるって思い出したんだ。
時間経過で
閲覧できる内容が変わる。

 友也君の説明が終わると、画面に何か入力するような枠が浮き上がってきた。その下には、奇妙な模様も描かれている。

 ここで友也君のキーボードを叩く手が止まった。

真悠

…………

アゲハ

何これ? パスワード?
これだけでわかる訳ないよ。

友也

何だ……?

 友也君も分かっていないみたい。だけど……

真悠

私、分かるかも。

友也

わかるのか、大神さん。

アゲハ

真悠、合ってるの、それ。

真悠

きっと大丈夫。

 間違いない。私はこのパスワードを知ってる。入力する文字は10桁。全部覚えてる。

 私はテンポ良く文字を選んでいく。あと一文字。

 光った。ま、眩し、い。ど、どうなるんだろう。

真悠

さな、ぎ……物語…………

 パスワードの先には、『蛹室物語』とあった。



 あのパスワード――私が知っていたのは、あの文字を知っていたから。そう、あの箱に刻まれた文字と一緒だったから。つまりここは、箱に関与していないと入れない場所。この物語が何を意味しているのか分からないけど、箱に関係している事は確かと言っていい。

真悠

友也君。
さっきみたいにここの
閲覧数調べられる?

友也

あ、ああ……
分かるよ。

友也

閲覧数……7。
たった7人!

次の日へ続く 

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