時計の針を、いったん戻そう。









その出来事のために。

――DAY 1――



宿屋『サスリカ』前

……

アダムスキー・アバルキンの部屋の窓に

謎の機械が見つけられた夜……

その、さらに数時間前、

1日目の昼へと。

──DAY 1──



イリヤが何件もの店を回り

飯屋「ミラ」に辿り着いたころ、

この男は動き出した。

悪いな。邪魔するぜ

カウンターに入り込み、

客室の鍵のスペアが入っている箱を取り出す

アダムスキーを、止められる者はいない。



そして、そのことを

この男は知っていた。







アダムスキー・アバルキン

その存在はこの町に強烈な影響を与える。




忌まわしき男がサスリカに入り込んだことを

知った町人たちは、

仕方がないことだと分かっていても

彼を泊めた、受け入れた宿屋の主人を

問い詰めずにはいられなかった。







実際、その時シャルロッタは

ロッタ、何故あの男を泊めた?

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

……

複数人で座って話せる場所……

飯屋『ミラ』に連れ出されていた。






この時間ならば、確実に

この箱に手を掛けることができたのだ。

数字ダイヤルの番号……それは、つまり「情報」だ

生憎と「情報」は……
俺の専門分野だ

借りるぜ

アダムスキーが取り出したのは、

3号室の鍵だった。

まず俺が疑問を抱いたのは、2点。
その1。なぜシャルロッタは絶対に誰にもリーリヤ嬢ちゃんのことを話そうとしないのか?

その2。
彼女の荷物は今どこにある?

嬢ちゃんがどこに消えたにせよ、親族が現れたのに何の説明もしないのは異常だ。
いくら、この町の住人でもな

何故なら、もし人が滞在中に消えたら、遅かれ早かれその「部屋」を、その中に残った荷物を整理しなければならないからだ

彼女が行方不明?
なら、尚更荷物を引き取らせる必要がある

ついでに言えば、前払いした料金より多く泊まっている扱いならその分の料金を請求できる

その請求がないってことは、
イリヤに言っていた滞在期間よりは長く泊まっていたが、それはリーリヤ嬢ちゃんには想定済みだったってことも分かっちまう

そう考えると、嬢ちゃん自身も怪しくなってくるだろう?

一方、彼女が「チェックアウト」していた場合だ

この場合、嬢ちゃんが消えようと何をしようと宿側には一切責任がない

それでも黙っている、というのは、考えられなくはないが……

彼女が信頼を置いているはずのセミョーンにさえ言わないのはなぜか?

考えていくと、ひとつの可能性が浮かぶ

シャルロッタは、嬢ちゃんのことを言わないように口止めされている

誰がそんなことを?
……黒幕か、嬢ちゃん自身しかありえない

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