――DAY 4――

夕方

酒屋

……なに?

セミョーン(ショーマ)

「アルセニーが生き返って復讐の鬼になった」だと?

酒場サッヴァ(サーヴァ)

ああ。間違いねぇ

…………

ちょっと待てよ。
サーヴァ、お前が見たのか?

ん?
いや、俺が見たわけじゃねぇが

ロッタがこの間、少しだけ顔を見たって言ったんだ。あいつならしっかりしてるし息子を見間違えたりしないだろ?
話すとき嬉しそうな顔してたらしいぜ

???

「らしい」?
ロッタから直接聞いたんじゃないのか?

ああ、それなら、そこで酔いつぶれてる奴らが言ってたぜ

……おいおい

酒場サッヴァ(サーヴァ)

飲む前からいやに落ち込んでて詳しい話は聞けなかったが、ラートカがロッタに聞いたらしい

それを聞いたスラ―ヴァが、アルセニーの墓が壊れてるのを見たって言ってな……

ふうん……なんで墓場なんかに行ったんだ?

酒場サッヴァ(サーヴァ)

そういや、斧が一本無くなったって言ってたな。探しに行ったんじゃねえか?

……なるほどな。それなら現実的になってきた

噂話ってのは膨れるからな……
おかげで正確に近い情報になった。ありがとよ

酒場サッヴァ(サーヴァ)

? よく分からんが、あんたの助けになったんなら嬉しいぜ!

しかし……
『あまり、気に病むんじゃないよ』か……

酒場サッヴァ(サーヴァ)

何だぁ?

セミョーン(ショーマ)

何でもない。にしても、よりによってスラ―ヴァまで、だいぶ酔ってるな。怒られても知らないぞ

ああ……さっきの話のあと急に懺悔なんて始めちまった

他人のこと気にするような奴らには見えなかったからビックリしちまったよ

セミョーン(ショーマ)

人間誰しも後悔はしてるってことだろ

酒場サッヴァ(サーヴァ)

お前も晴れねぇ顔してんな。どうした?

まあ、ちょっとな……

お前にも後悔でもあるのか?

否定はできねぇな

飯屋ザミーラ(ミラ)

ショーマいないかい?

セミョーン(ショーマ)

ミラ? どうしたんだ?

誰かに窓割られちまって、寒くて仕方ない

適当でいいから塞いでくれないかい?

……割られた?

飯屋ザミーラ(ミラ)

石を投げ込まれたんだけどね……

その、あんたにはちょっと変だって言われちまうかもしれないけど……

アルセニーみたいな男の顔が見えたんだよ、割れた窓の向こうから

!!

それは――

ファイーナ(ファーヤ)

もしかしてここに父が来てません? 引きずってでも連れ帰しに来たんですけど

酒場サッヴァ(サーヴァ)

あ、ああ……やあ、ファーヤ
そこで寝てるな……

ファイーナ(ファーヤ)

お母さんの遺言を何だと思ってるのかしら、駄目親父

いつも父娘でこんなに顔が違うのかと思うが、性格はハッキリしてるところが似てるんだよな……

セミョーン(ショーマ)

あー……ちょっとは大目に見てやってくれ、色々あったらしいからな……

ファイーナ(ファーヤ)

あ、ショーマ!
探してたのよ

セミョーン(ショーマ)

俺も飲酒しちゃ駄目なのか?

そうじゃなくて!

さっき、アルセーニャみたいな人が歩いていくのを見たの……

お前もだと?!

その夜、示し合わせたように

一つのものが見つかる。

激しい雪の中

奇跡的に無事だった紙には、

女の文字で助けを乞う文字が

綴られていた。







そしてその裏に、

男の顔が

簡単な鉛筆のような筆記具で描かれていた。

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