――DAY 4――
午後
森小屋
――DAY 4――
午後
森小屋
……ここ数日目撃されているのは、嬢ちゃん本人じゃない……
そろそろ、その可能性も考えるべきだな
どういう……
思考停止してんなよ
……いや、悪りぃ
セミョーンは、反射的に言ってから
ばつが悪そうに眉を下げた。
お前が昔からサスリカに住んでるなら、無気力状態になっちまうのも、見たものをそのまま信じたくなっちまうのも分かる
だが、この町の雰囲気に飲まれるなよ
ここは、間違ってる。異常なんだからな
っ……
もちろん、『神話生物』なんてのも、それを当たり前として受け入れている俺も異常さ。知ってしまった以上、お前だって異常だ
だが、そこで歩みを止めるのか?
大事な妹の為なら、どんなに足掻いてでも正気でい続けようとする。それが『正常な』、『正しい』あり方って奴じゃないか?
それが『正しい』……?
イリヤは、顔を上げた。
とはいえ……絶望的なのは、変わらねぇけどな。こんなのは詭弁だ
嬢ちゃんが助けも求めずに出歩いてることも、僅かの間しか姿を見せないのも、ああ考えれば説明がつく
幻覚でなくてもいい。姿形を変える呪文もあれば、呪文もなしにそんなことができる神話生物もいる
リーリヤは、もう死んでるって……言いたいんですか?
イリヤの目に勢いが戻っていた。
可能性はあるってだけだ……
なんで今言うんですか
……
なんで、もっと早く言ってくれなかったんですか。駆けまわる僕を嘲笑ってたんですか?
……
なんで、優しさを貫いてくれなかったんですか。僕に希望を残したかったなら最後まで黙っててくださいよ
……
なんで、中途半端に期待させてそれを壊すんですか……
……
……最低
イリヤは、森小屋を飛び出していった。
…………そうだな。言うならもっとずっと早く、言うべきだった
お前に『そんな言葉』を言わせる前に、俺が腹をくくるべきだったよ
結局俺は、3年前から変わっちゃいねぇ……ってか?
だから、お前は甘すぎるんだよ。
こんな茶番は……さっさと終わらせてぇもんだな