――DAY 4――

午後

森小屋

……ここ数日目撃されているのは、嬢ちゃん本人じゃない……

そろそろ、その可能性も考えるべきだな

イリヤ(イーリャ)

どういう……

セミョーン(ショーマ)

思考停止してんなよ

……いや、悪りぃ

セミョーンは、反射的に言ってから

ばつが悪そうに眉を下げた。

セミョーン(ショーマ)

お前が昔からサスリカに住んでるなら、無気力状態になっちまうのも、見たものをそのまま信じたくなっちまうのも分かる

だが、この町の雰囲気に飲まれるなよ

ここは、間違ってる。異常なんだからな

っ……

セミョーン(ショーマ)

もちろん、『神話生物』なんてのも、それを当たり前として受け入れている俺も異常さ。知ってしまった以上、お前だって異常だ

だが、そこで歩みを止めるのか?

大事な妹の為なら、どんなに足掻いてでも正気でい続けようとする。それが『正常な』、『正しい』あり方って奴じゃないか?

それが『正しい』……?

イリヤは、顔を上げた。

セミョーン(ショーマ)

とはいえ……絶望的なのは、変わらねぇけどな。こんなのは詭弁だ

嬢ちゃんが助けも求めずに出歩いてることも、僅かの間しか姿を見せないのも、ああ考えれば説明がつく

幻覚でなくてもいい。姿形を変える呪文もあれば、呪文もなしにそんなことができる神話生物もいる

イリヤ(イーリャ)

リーリヤは、もう死んでるって……言いたいんですか?

イリヤの目に勢いが戻っていた。

セミョーン(ショーマ)

可能性はあるってだけだ……

イリヤ(イーリャ)

なんで今言うんですか

……

なんで、もっと早く言ってくれなかったんですか。駆けまわる僕を嘲笑ってたんですか?

……

なんで、優しさを貫いてくれなかったんですか。僕に希望を残したかったなら最後まで黙っててくださいよ

……

なんで、中途半端に期待させてそれを壊すんですか……

……

……最低

イリヤは、森小屋を飛び出していった。

…………そうだな。言うならもっとずっと早く、言うべきだった

お前に『そんな言葉』を言わせる前に、俺が腹をくくるべきだったよ

結局俺は、3年前から変わっちゃいねぇ……ってか?

だから、お前は甘すぎるんだよ。

こんな茶番は……さっさと終わらせてぇもんだな

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