――DAY 4――

午後

森小屋

そろそろ「終わる」な

セミョーン(ショーマ)

この後用事があってな、捜索を手伝ってやれればいいんだが

イリヤ(イーリャ)

そろそろ終わる?

セミョーンさんって、何をしてたんでしたっけ……?

ああ……

仕事は雑用程度なんだけどな……ちょっと、時間のかかる調査をしてた

調査?

お前は聞かない方が良い

……それって、神話生物のことですか?



セミョーンは、ゆっくりと振り向いた。

誰 か ら 聞 い た ?

え? っ、と……その

この町の奴らは、『かみさま』やそれに似た存在のことを、その名で呼ぶことはない

その概念を知らないからな

知ってる奴もいるが、少年に口走るとは思えない……

……

……アダムスキーだろ?

えっ

図星みたいだな

ったく……

セミョーンは表情を和らげた。

別に、あの男と話そうが何を聞き出そうが、俺は止めねぇよ

あの男を信用する気なら、それは愚の骨頂としか思えないがな

……セミョーンさん

ただ、ソレのことは……『神話生物』なんて単語、気安く口にするとは思わなかったぜ

僕も、まだよく自分の中で整理がついてなくて……

もう、無垢なる者じゃねぇ……か。いや、当たり前だよな

こっちの話だ。
で、どこまで知ってるんだ?

イリヤ(イーリャ)

えっと……神みたいな、魔法を……魔術を使える生物がいるって……

……それから、『かみさま』も、その一つで……

……だいたい分かった。
じゃあ、これは聞いたか?

俺もアダムスキーも、ただの人間だが、少しだけ魔術を使うことができる

……セミョーンさんも?

セミョーン(ショーマ)

俺は調査、サポート系の呪文が主だが、アダムスキーは違うぜ。主に……

……

セミョーンは、言いかけた言葉を切った。

……イリヤ、しばらく目ぇ閉じてな

えっ?

そして、返事を待たずに、鏡を取り出した。

……[MIRROR OF TARKHUN ATEP]……?

な、なんなんですか

そのとたん、鏡面が歪んだ。

えっ?! な、な……

セミョーン(ショーマ)

……見るなって言ったろ

――

何か、鏡から音がした。



至近距離にいなければ聞こえない程度の

かすかな声だった。



と思う間に、鏡から影が消えた。

――そこそこ最悪ってことかよ

セミョーンは舌打ちをした。

……何か分かったんですか

……聞かない方が良い

何故ですか?
僕が子供だから?

それとももしかして、リーリヤと関係あるんですか

……

関係あるんですね

……調査の結果が出たんだよ

セミョーンは、小さな声で言った。

……この町で、最近頻繁に魔術が使われてる。それも、残虐なものばかりだ

残虐、って

詳しい内容は分からない。……魔術や儀式を使うためには代償が必要だ。血や生贄を要するものもある

まさか、リーリヤが

……ここ数日目撃されているのは、嬢ちゃんの幻って可能性もあるな

!!!

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