――DAY 3――



宿屋『サスリカ』

……ただいま

イリヤは宿屋の扉を疲れた顔で開けた。

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

……ん

シャルロッタが眼鏡を外したところだった。

あ、お疲れ様です

……

返事はない。

あ……

気まずそうにイリヤは目を背けた。

……

ふう

さて……

えっ?!

こんな遅くに帰ってくるのは無理してるって言わないのか?

ア、アダムスキー、さん

イリヤは驚き、言葉を詰まらせた。

イリヤ(イーリャ)

何してるんですか……

……部屋から外の様子を伺ってたんですか?

アダムスキー

一応気を遣ってるのさ

アダムスキーは耳を指で軽く叩いてみせた。

……

足音……

ふう

声?

さて……

「イリヤ」か……

アダムスキー

セミョーンなんかと廊下で出くわしたら、大喧嘩になりかねないからな

……

「お子様」は寝る時間だぜ

アダムスキーはイリヤの横をすり抜けていった。

あの人、今からどこに行く気だ……?

空き家『ミーシャ』

アルセニー、俺はあんたのことを少しだけ恨んでるぜ

アダムスキーは暖炉の前で息をついた。

アダムスキー

3年前、あんたが余計な事をしなきゃ……身体を張って儀式を止めるなんてことしなきゃ、今こんなことにはなってなかったかもしれないぜ?

あんたが手の付けられない馬鹿ってことは知ってたさ。だが、事前に知ってるくらいで止められるような決意じゃなかったんだろ?

さてと……精製も終わりだ

アダムスキーがすくい上げた匙の中には、

精製されたばかりの、白い粉がたまっていた。

[POWDER OF IBN-GHAZ]

この町で調達できる材料を見つけたのはあんただったな

鱗、樹海深くの不凋花(ふちょうか)、生贄を捧げ続けた祭壇の塵……

……こんなものを、作りたくはなかったのさ

こいつを使わなきゃならねぇ事態は避けたかった……

匙をわずかに傾ける

粉が舞った中に、

わずかに浮かび上がる気がする影。

……

……いや、あんたがこんな場所に留まってるとは思えねぇな
きっと地獄にでも行っちまうんだろう?

勝手に死にやがって……美化されちまったら、文句も言えやしない

だから、これはただの独り言だよ

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