ナンチャイ

こんちわっす。
ナンチャイっす。
二話目を読んで頂けるのは
光栄極まりありません。

ナンチャイ

えと、今回は私の姉の話です。
私の出番はここで終わりなので
まずは姉の紹介をば少しします。

ナンチャイ

彼女を分かり易く言えば
ぶっ飛んだ人です。

以上です。

それでは回想スタートォ。

ナンチャイ

あああああ、私の出番ぐぁ~。

 姉はジャニーズの超有名グループの大ファンだ。今回はそれにまつわるお話である。

姉やねん!
俺、ナンチャイの姉ですねん。
そんでもって
嵐の大ファンやねん。

でもどうしても
見たいDVDがあんねんけど
御台所事情で
買うわけにはいかんねん。

しかーし!
普通レンタル屋にもない
このDVDが、
山を越えた隣の県の
レンタル屋にある情報を
GETぉ!!

嬉しすぎるぅ~。
これで嵐がみられるぅ~。

 そこで店に電話で確認した。

店員

はい、こちら
山越えレンタブイディです。

すいませーん。
そちらの店に
嵐のDVDあるって
聞いたんですけど
貸出中ですか?

店員

少々お待ち下さい。

ドキドキドキドキ

ドキドキドキドキドキ
ドキドキドキドキドキ
ド‡ド‡ド‡ド‡ド‡

 この返事によっては、一週間待たねばならない。この確認時間は心臓に良くない。耐えられぬ間。よく見返すと、ドキドキと口で言っている姉。

店員

お待たせしました。

はいぃ!
お忙しいところすみません。

店員

現在、貸出可能でございます。

そうなんですかぁ。
良かったぁ。
今からすぐに行くので、
取り置き願えますか?

店員

申し訳御座いません。
お取り置きはさせて
頂いてないんです。

え!?
そ、そうなんですか?
もう向かってるんですが……

店員

申し訳ございません。

わかりましたぁ。
それじゃぁすぐに
寄らせてもらいます。

何やねん!
すぐ行く言うてんねんから
置いとけや!

でもしゃあない。
すぐ行くしかない。

 姉は即座に行動を起こした。自家用の軽自動車に乗り込み山越えに挑む。峠でコーナーを攻めるようにかっ飛ばしていた。

え!?

 聞きなれない音が聞こえたと思ったら、車に異変が! 車を脇道に止め確認すると、パンクしていた。何故? 今? こんなに急いでんのに! と、悲痛なる叫びが口から溢れ出る。

 でも、こうなったらしょうがない。早く解決して急ぐだけ。JAFとか呼んでも遅そうやし、家でくつろいでる旦那を呼んだ方が早い! そう決断した姉は、電話で要求(命令)した。

おっそいなぁ~。
イライラするわ。

 やがて到着した旦那がせっせとタイヤ交換する。
素人にしては手早い交換で問題なく交換は終わった。

やっと終わったん?
ほなアタシは行ってく
ッ!!

痛----!

 暗闇の中、車に即座に乗り込もうとした姉は、交換したパンクタイヤにおもいきり足をぶつけたのだ。

いったいわー。
でもそんなんええねん。
早よ行かな、
なくなってまう。

 旦那にパンクタイヤ処理を任せ、またもや峠のコーナーを攻める姉。

 そして、山を越え、県境を越え、偶発的な故障も乗り越え、ついにレンタル屋に辿り着いた。

 だがレンタル屋に駐車場はなく、路駐ですら少し離れた場所にしか置けない。

 最後の信号で掴まり、長時間待たされる。後一歩で路駐してレンタル屋にダッシュするだけなのに。そう思うと余計に気は急ぐ。ノロノロ左折する前の車に怒号を飛ばしたくなる気持ちを抑え、ようやく路上駐車。少しの間だけなら大丈夫だろうと思って置いた。

ハァ、ハァ。

 レンタル屋に向けて、即効ダッシュする姉。鬼気迫る姿は、コンビニ強盗でもして逃げているようだ。

 夏真っ盛りのこの頃、暑くて黙っていても汗が滲むのに、フルパワーでダッシュする40前の主婦は汗だくだった。

 ――着いた。ようやく、着いた。

 そして店に侵入するや否や、開口一番こう言った。

嵐のDVD!
ありますか!?

 店員は唖然としていた。確かに入店と同時にそんな聞かれ方したら驚くに違いないが、それほど固まるほどでもない。さっさと理解して、答えるなり質問するなりすればいい。姉はそう思い、店員の反応を待った。 




店員

アババババ

 するとどうでしょう。店員は恐怖の色を全面に滲み出させて震え上がっている。およそカウンターにいる者が出さない声での錯乱。顔面蒼白になって、口を耐震テストでもしているのかと思わせるほど震わせている。


 そして汗だくになった姉は気付いた。




自分の足元が
血だらけである事を!

血の海とはよく言ったもの。



タイヤにぶつけた足は
重症だったらしく
その足で気付かず
猛ダッシュ。
路上にガキが居ても
跳ね飛ばす勢いのダッシュ。

長い髪を掻き乱し、
汗だくの40前の女が、
肩で息をして、
血みどろで入店して来て、
嵐がどうとか
わめき散らした。












って、そういう話でした。

第二話 『ア・ラ・シのDVD』

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