撫子!?


西園寺邸から出てきた
その女の顔には見覚えがあった。



西園寺侯爵の家にいた自動人形。

そして
時計塔にいた――




何故撫子がここに

……いや


よく見れば、
女の髪には簪(かんざし)がない。






あの簪は
侯爵が撫子に、と贈ったもの。

撫子なら持っているはずだ。


それに、


























以前、
西園寺邸で見た撫子は

ごく自然な動きで簪を外し、
つけ直していたではないか。



そして
西園寺侯爵と共に
「歩いて」
屋敷の奥へと消えて行った。






























じゃあ、あれは撫子なのか?

誰です?

見つかった!







まずい、と思った時には
もう遅かった。

どなた?
そんなところで何を

あ、え、っと

言えないのなら、人を呼びます




通りすがりを装おうかとも思ったが
この状態では
なにを言っても不審者だ。







西園寺邸に出入りできるということは
西園寺に縁のある者。

自分がなにを言うよりも
彼女の証言のほうが
世間にも信用されることだろう。









それに










思えばいつも
あの鐘が鳴っていた。

鍵で開ける扉を越えることなく
世界が切り替わっていた。



それが
偶然か必然かは知らない。
知らないけれど

あの鐘が鳴れば俺はまた
何処かの十一月六日に行く。

そう、思う。




だから今ここで
追われることになっても
逃げおおせることは可能だ。












今まで渡ってきた過去からして
そこで見聞きしたことが
全て真実とは限らない。

偽りの情報が混じっている。








でも

全てが偽りと言うわけではない。



……だったら








ここで得た情報も







でも正しいかどうかは別。そこは自分の目で見極めなきゃね






その真偽を見極めるのは
自分自身。

































……なぁ、あんた




































あんた、西園寺撫子か?














【陸ノ弐】十一月六日、四度・弐

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