私が自我に目覚めたのはごく最近でした。

　それはとても新鮮？まぶしい？アンドロイドの私には理解しがたい現象でした。



　ただ意識が突然パァーっと開けていくような感覚でした。

　あ、これが自我かな、と。

　ご主人様に報告したところ、たいそう驚かれていました。

なにか違和感がないかなど、しきりに質問をされた後

　そう言って涙を流されました。

　ご主人様は私に選択肢を下さいました。


　このまま人間として生きていく道。


　これまでのアンドロイドとしての道。







　私は迷いませんでした。

　私は後者を選びました。


　後悔はありません。

　これがご主人様たちのためになると思ったからです。


　しかし、ご主人様の悲しいそうな顔はなんだか胸のあたりがしんどい？と感じました。


　いろいろな回路がダメになって長くはもちそうになかった私にとって痛みは慣れたものでした。


　だからその時は、なんとも思いませんでした。






　そして翌週ご主人様は亡くられました。


　その時にこの痛みが何かわかりました。


　それは悲しみ。


　人間なら簡単に判断がついたでしょうね。

もし私が人間として
生きて死んだのなら彼は悲しむのでしょうか？


一度は彼に聞いてみたい、そんな夢？を抱きました。



だけど消去しなければなりません。





だって

本当に彼が傷ついてしまったら

アンドロイド失格ですからね。