少年はクオリアの手を優しく自分の手で支えるようにして指先から付け根まで見た。
君の手少し見てもいい?
了承。特にめぼしいモノのはない
少年はクオリアの手を優しく自分の手で支えるようにして指先から付け根まで見た。
あぁ、やっぱり少し錆びてきたね
もう最後の整備から10年くらいだもんね
少年の声は暗い。
表情も少し暗く悲しそうだった。
しかし、どこか愛おしそうに少年は言う。
けどやっぱり綺麗だ。君の手は
肯定。毎日の自己修復
クオリアは自己修復と言ったが、もうその機能はほとんど使えない。
自らヤスリをかけ見た目だけを綺麗に見せているのだ。
この機能不全によりもう彼女は長くはないのだ。
だから、クオリアは嘘をついた。
まだ自分は動けると、そう言ったのだ。
少年を悲しませないために。
しかし、彼女はまだ気が付いていない。
それがアンドロイドとしての在り方ではなく、人間としての在り方だと言うことを。
全部含めてそう思うよ、僕は
だから、これをつけたらもっと綺麗になるんじゃないかな
少年は上着のポケットに手を突っ込むと何かを握り、クオリアの手の前まで持ってきた。
そして少年が手を広げると、青く光る小さな欠片のついた銀色のリングがあった。